施設基準プロフェッショナルコラム

COLUMN16|施設基準における「看護師」

平成29年6月30日

施設基準における「看護師」の意味

様式9を作成するときを初めとして、施設基準で使われている[看護師]とは何を意味するかご存知でしょうか。

様式9の作成を担当されている皆さんでしたら「そんなものは知っていますよ」と当たり前のように言われるかもしれませんが、病院の職員の方がこの言葉の意味をきちんと理解していなかったために、個別指導や適時調査で指摘を受けたり多額の返還金が発生してしまった事例もありますので、もう一度確認をしてみたいと思います。

施設基準では「看護師」やこれに類似する言葉(下記参照)がたくさん使われています。施設基準を担当されている皆さんは別として、皆さんの病院の職員の方が全て間違えなく理解していると胸を張って自信をもって言えますでしょうか。

  • 看護師
  • 保健師助産師看護師法の第7条に記載があるように、厚生労働大臣の免許資格がある者です。

  • 准看護師
  • 保健師助産師看護師法の第8条に記載があるように、都道府県知事の免許資格がある者です。

  • 看護補助者
  • 看護師や准看護師の免許資格が無い病棟の従事者で、通常は師長や看護職員の指導の下に療養生活上の世話などを行う者です。看護助手などとも言われています。

  • 看護職員
  • 看護師と准看護師のことです。

  • 看護要員
  • 看護職員(看護師と准看護師)と看護補助者を含めた総称です。

全体のイメージとしてはこのような感じになります。

施設基準に限らず、診療報酬の取り扱いでは「看護師」と記載があれば准看護師は含まれません。准看護師を含んでよい場合には「看護師及び准看護師」か「看護職員」のように記載されています。

施設基準の入院基本料の加算、特定入院料、医学管理、リハビリテーションなどでは、「看護師」と規定されているものが多いのですが、現場の担当者の方とお話をするときに「「看護師」と書いてありますが、「准看護師」ではだめですか。」と、多くの方から質問を受けます。おそらく、この方々は上記の意味を理解していないからではないかと思われますが、とても危険なことであることを認識していただきたいと思います。

現場の方の理解不足により「看護師」と記載されている施設基準において、誤って「准看護師」を配置してしまったことにより、施設基準の要件を満たせず診療報酬が過請求となり返還となってしまったこともありましたので、くれぐれも注意してください。

特定入院料の中で、救命救急入院料、特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料、脳卒中ケアユニット入院医療管理料、小児特定集中治療室管理料、新生児特定集中治療室管理料(助産師も含まれる)、総合周産期特定集中治療室管理料(助産師も含まれる)、新生児治療回復室入院医療管理料(助産師も含まれる)、一類感染症患者入院医療管理料、小児入院医療管理料1~3、緩和ケア病棟入院料、精神科救急入院料、精神科救急・合併症入院料、児童・思春期精神科入院医療管理料などについては、その配置要件に「看護師」と記載がされております。これらの施設基準において看護師の部分に准看護師を配置してしまいますと、その分は看護師が居ないものとして取り扱われます。看護師の必要数を超えて余分に准看護師を配置するのでしたら基準は維持されますが、看護師の必要数の中に准看護師の配置を含めてしますと、その分が差し引かれてしまいますので、基準から逸脱してしまいます。

特に、小児入院医療管理料1~3、緩和ケア病棟入院料、精神科救急入院料、精神科救急・合併症入院料、児童・思春期精神科入院医療管理料につきましては、看護師の配置状況を病棟単位で様式9により確認することとなります。通常の入院基本料でしたら、看護師と准看護師を合わせた「看護職員」としての配置を確認することが多いので、准看護師の配置に注意するのは13対1以上の夜勤体制(看護師1名以上を含む複数体制)のことぐらいです。

このことに慣れてしまい、看護師配置に関しての錯覚をして、その病棟の配置者の中に「准看護師」を1人位はうっかりして入れてしまいそうですので、ルールが違うことをよく認識して病棟従事者配置をしなければなりません。

また、特定入院料が要件不足により施設基準が維持されなくなりますと、届出してある当該病棟や治療管理室の部分は一般の入院基本料に組入れられ、他の7対1や10対1の病棟と包括して入院基本料の要件が満たされるかの確認をしなければならなくなります。これらを包括したことにより月平均夜勤時間数を再計算した結果が72時間を超えてしまうようなことも連鎖的に起こり得る可能性もあります。そのようなことになりますと、返還金の額も想像の範囲を超えてしまうこともあり得ないお話ではありません。

現場の看護部長さんが「看護師」の意味を「准看護師も含まれる」と錯覚してしまい、看護師の配置が必要なところに准看護師を配置したことにより、看護師数が必要数を満たさなかったために施設基準が維持できていないとされ、多額の返還金を指摘されてしまったケースもありました。

入院基本料の加算、医学管理料などの施設基準においても「○○の経験がある看護師」のように記載があるものも数多くありますし、診療報酬の算定においても「看護師が実施した場合」のように記載があるものもあります。これらは全て「看護師」でしか要件を満たしませんので、くれぐれも注意いただきたいと思いますし、院内のすべての職員の方に、このことの意味を100パーセント理解していただくように周知徹底いたしませんと、誤請求による返還金が発生してしまう危険があることを認識いただきたいと思います。

竹田和行(株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役)

竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。