施設基準プロフェッショナルコラム

COLUMN18|院内掲示のルール確認 その2

平成29年8月31日

保険医療機関の病院における院内掲示について

前回に続いて、保険医療機関の病院における院内掲示につきまして説明します。

  • 保険外併用療養費に関すること

評価療養、患者申出療養又は選定療養として、一部負担金の額を超えて患者から費用を徴収する場合には、その内容と費用に関する事項を掲示しなればなりません。

根拠につきましては「保険医療機関及び保険医療養担当規則」の第5条の4第2項に示されており、具体的なことにつきましては「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」と言う通知があり、その中に項目ごとに細かなことが示されております。

「評価療養、患者申出療養、選定療養」のように馴染みのない言葉ですと、ピンと来ない方も居るかと思いますが、「特別療養環境室(差額ベッド)や予約診療などにおいて、別料金を徴収すること。」と言えばお分かりいただけると思います。

この通知の中では、特別療養環境室に関しては「保険医療機関内の見やすい場所、例えば受付窓口、待合室等に特別療養環境室の各々についてそのベッド数、特別療養環境室の場所及び料金を患者にとって分かりやすく掲示しておくこと。」と明記されております。

よく見かける掲示例として表1のようなものがありますが、これでは要件を満たさず不適切なものになってしまいます。どこが不適切かと申しますと、通知では「各々について」とされていますので部屋ごとに掲示しなければなりませんし、「場所」も掲示されていません。また、「特別室」としか表現されていないためベッド数が不明です。「特別室は個室が当たり前ですよ」と言う方が居るかもしれませんが、それは一般的には受け入れられないでしょう。

ホテルなどでは「特別室」と言うネーミングであっても複数名で宿泊できる部屋もありますので、誤解する人がいるかもしれませんし、そのように誤解が生じるような表現では「患者にとって分かりやすく」と言うことにもなりません。場所については平面図を掲示してそこに示す方法もありますが、一般的には部屋番号を明記すれば差し支えないと理解されています。

最低限の掲示事例としては表2のような程度のものは必要と思います。最近ではこれらに加えて例えば「テレビ(無料)、冷蔵庫(無料)、シャワー室、トイレ」など、設置されている設備も一緒に掲示されているものか多くなっているようです。

  • 施設基準ごとに掲示が指示されているもの

届出をした施設基準によっては、その告示や通知の中に「掲示について」のことが明記されているものがあります。

例えば、総合入院体制加算、緩和ケア診療加算、栄養サポートチーム加算、医療安全対策加算、感染防止対策加算、患者サポート体制充実加算、ハイリスク分娩管理加算、後発医薬品使用体制加算、病棟薬剤業務実施加算、退院支援加算1、外来緩和ケア管理料、院内トリアージ実施料、地域包括診療料、ニコチン依存症管理料、ハイリスク妊産婦共同指導料、コンタクトレンズ検査料、歯科技工加算、回復期リハビリテーション病棟入院料におけるリハビリテーション充実加算などの施設基準においては、施設基準の告示や通知の中に、掲示内容や場所のことが明記されておりますので、該当する施設基準の通知などをよく確認して、適切な掲示をしておきましょう。

ここで注意していただきたいのが、「掲示」とされているものは、特に明記されていなければ「病院側で作成したもので内容が分かりやすく示されているもの」を意味します。後発医薬品使用体制加算の院内掲示を確認したところ、業者や業界団体が作成した「ジェネリック医薬品の啓発ポスター」が貼ってあり、それを示されて「これです」と言われたことがありましたが、そのようなものでは施設基準のルールで言われているような院内掲示には該当いたしません。また、ニコチン依存症管理料についても同様に、「禁煙治療の啓発ポスター」しかなかったところもありましたので注意してください。

なお、回復期リハビリテーション病棟入院料におけるリハビリテーション充実加算の届出がされている場合には、前回の診療報酬改定時に通知の中に下記の文面が追加となっております。この掲示については、最近になってルール化されたこともあり、対象となる病院においてもかなりのところが掲示漏れになっているようですので、注意してください。

  • 通知等に「掲示」の文言が触れられていなかったり、届出が不要な施設基準に関するもの
  1. 「屋内禁煙の施設基準の取り扱い」が適用される場合
  2. 上記の場合には、施設基準の通知の中に「保険医療機関の屋内における禁煙の取扱いについて、基準を満たしていること。当該基準については、(「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」別添3の)第1の2の(4)と同様であること。」のように記載されているものがあります。

    この文章では院内掲示のことには何も触れられていませんが、「第1の2の(4)と同様」の部分が何を意味しているが確認していただきたいと思います。この部分は基本診療料の施設基準の通知で、総合入院体制加算2における(4)の部分を意味します。そこの「イ」の部分には「屋内禁煙を行っている旨を保険医療機関内の見やすい場所に掲示していること。」と明記されています。

    このことから「屋内禁煙を行っている旨」の掲示が必要となります。

    このルールは届出が不要な施設基準にも明記されているものがあります。例えば小児療養指導料、外来栄養食事指導料、入院栄養食事指導料、集団栄養食事指導料、小児悪性腫瘍患者指導管理料などの医学管理等を算定する場合においては、届出は不要ですが施設基準には該当することとなっており、屋内禁煙のルールが適用されることになります。届出が不要なため、施設基準の通知を見落としてしまい、掲示の必要性に気が付いていないところもあるようですので注意してください。

    なお、よく見かける掲示として「健康増進法第25条の規定により禁煙としています。」のようなものを見かけますが、「健康増進法の規定」と書かれてしまいますと、施設基準における掲示の主旨と意味が少し違ってしまいますので改めた方がよろしいでしょう。

  3. 「医科点数表第2章第10部手術の通則の5及び6(歯科点数表第2章第9部手術の通則の4を含む)に掲げる手術」の取扱いにおいて該当する手術の点数を算定する場合
  4. 上記の場合には、1年間(1月から12月)の手術件数を記載のある区分ごとに掲示しなければなりません。この施設基準も届出が不要とされていることから、該当する手術の点数を算定しているところが多くなっておりますが、院内掲示がなければルール違反となり算定が出来なくなりますので、必ず掲示をするようにしてください。

    前回から引き続いて読んでいただくとご理解いただけたと思いますが、院内掲示については、保険診療に関するルールが示されているいろいろなものに、その必要性や方法などが明記されており、場合によっては該当する通知文の中には直接的には記載がなく、読み替えた先に記載があるなど、相当複雑なものになっておりますので、関連する通知などを細かく確認することを忘れないようにしてください。

院内掲示は、本来は患者に対する情報提供が目的とされるものですから、ただ単に掲示してあれば良いものではなく、初めて病院を訪れた一般の方々にも理解されやすいような表現や内容での掲示をすることが必要であり、それが患者本位の病院の姿を示す第一歩となるとものと思います。

飲食店などの価格表が、商品名と一緒にただ単に「○○円」と書いただけものと、写真が付いていたり、商品の説明が添えられているようなものでは、利用する方から見てどちらが親切で分かりやすいものであるのか、皆さんならご理解いただけるものと思います。

竹田和行(株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役)

竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。