施設基準プロフェッショナルコラム

COLUMN23|平成30年度診療報酬改定時の施設基準の届出準備

平成30年2月15日

診療報酬改定準備は大丈夫ですか

診療報酬改定の内容が具体的に示された厚生労働省からの通知は、3月5日(前回の平成28年改定時は3月5日が土曜日でしたので、4日に通知がされています。)にされることが多くありましたので、今年もこの日前後に通知が示されるものと思われます。改定内容はこの通知を見ないと正式に把握できませんが、準備に怠りがないところでは診療報酬改定の準備はもう進められております。実は、この通知を待っていては改定に間に合わないようなものもありますので注意してください。

「4月1日からの改定のことなのに、なぜ3月5日では間に合わないのか。」の疑問を持たれる方も大勢おられることと思いますが、改定後の点数をただ単に算定するだけのことでしたら、4月1日に拘らず算定可能となった日、例えば4月2日とか15日とか、5月からなど、4月1日以後なら何時からでも算定できますので慌てる必要は何もありません。

間に合わないのは施設基準で実績期間が必要なものです。例えば、基本診療料の施設基準については、特に定めがなければ1カ月間の実績が必要とされています。1カ月間の実績が必要な施設基準の点数を4月1日から算定したいのであれば遅くても3月1日から実績を開始しなければ間に合いません。3月5日の通知を見てから準備したのでは遅いという意味はこのことからです。

3月1日からの病院の実態が、改定後の施設基準の内容に運よく合致しているようなことが偶然にもあったのでしたら、それが実績として認められますので4月1日算定開始分の届出は可能ですが、そうでなければ5月から算定開始の届出しか出せないことになります。これを防ぐには3月5日を待たずして、3月1日以前に施設基準の内容に合致するように人や器具類の配置、帳簿類の作成などを準備しなければなりません。このヒントになるものが2月7日に発出された、診療報酬の改定について中央社会保険医療協議会から厚生労働大臣に対して答申(以後、「中医協の答申」とします。)です。答申の内容は厚生労働省のホームページに掲載されていますので、一度確認されることをお勧めいたします。

厚生労働省ではこの答申を基にして改定に関する通知を作成いたしますので、答申内容と改定内容が大幅に相違することはまずあり得ません。

この中医協の答申では施設基準の通知に明記されるような細かな文言までは記載されておりませんが、何処に何がどのくらい必要なのか程度のことは十分に理解できるように記載されています。施設基準に詳しい方なら、この答申の文書を読んでいただければ「何処に、どのスタッフを、何人。何の器具を、いくつ。」必要なのか程度のことは十分に理解していただけるものと思います。

これらの資料に掲載されているものの中で、病院に関係する改定予定のものを幾つか抜粋して説明します。

  • 一般病棟入院基本料の区分の変更について
  • 現行の一般病棟入院基本料7対1と一般病棟入院基本料10対1は急性期一般病棟入院基本料となり入院料1から7までの7区分に、一般病棟入院基本料13対1と一般病棟入院基本料15対1は地域一般入院基本料となり入院料1から3までの3区分になり、現行の4区分から10区分に細分化されます。

  • 一般病棟用の重症度、医療・看護必要度(この記事内では「看護必要度」とします)について
  • 評価の形態が2種類に分割され現行方法がⅠの基準に、診療実績データを用いた場合が新たにⅡの基準に位置付けられ、患者割合の計算が3か月平均となり「届出後における1割以内の一時的な変動」についての変更届出不要の要件が無くなります。

    また、C項目での評価の中で開腹手術は現行の5日間が4日間に短縮され、該当する基準として新たに「A得点が1点以上、B得点が3点以上かつ「B14 診療・療養上の指示が通じる」又は「B15 危険行動」のいずれかに該当する」場合が追加されます。

    改定後では看護必要度を満たす患者割合は現行方法による算出ですと、急性期一般病棟入院基本料の入院料1が30%、入院料4が27%、入院料5が21%、入院料6が15%となります。

    経過措置として、看護必要度については200床未満の病院においては2年間に限り、入院料2が現行方法で27%、入院料3が同じく26%となります。

    また、改定前に一般病棟入院基本料7対1の場合には改定後の急性期一般入院料1に、同様に一般病棟入院基本料10対1で看護必要度加算1の場合には改定後の急性期一般入院料4に、一般病棟入院基本料10対1で看護必要度加算2の場合には改定後の急性期一般入院料5に、一般病棟入院基本料10対1で看護必要度加算3の場合には改定後の急性期一般入院料6に読み替えられ、9月末までは改定後の看護必要度の割合を満たしているものとされますので、6か月間はそのまま改定後の点数が算定できます。

    なお、回復期リハビリテーション病棟入院料1においては看護必要度を満たす患者割合が現行では5%とされておりますが、改定後はなし(0%)となります。

    点数は急性期一般病棟入院基本料の入院料1が現行の一般病棟入院基本料7対1と同じ1591点、急性期一般病棟入院基本料の入院料7が現行の一般病棟入院基本料10対1と同じ1332点となります。

  • 在宅復帰率について
  • 在宅復帰率は、現行の回復期リハビリテーション病棟入院料2は6割以上となっておりますかが、改定後は新しく回復期リハビリテーション病棟入院料3又は4の基準となり7割以上とされます。また、新たに「介護医療院」が計算対象として含まれまれ、現行の一般病棟入院基本料7対1に代わり新設される急性期一般入院料1では名称が変更され「在宅復帰・病床機能連携率」となります。

  • 小規模病院の夜間救急外来対応について
  • 現行の入院基本料においては、夜間帯においては病棟ごとに看護職員を2名以上の配置が求められているものがありますが、この場合には看護職員が2名しか配置のない病棟から救急外来に看護職員を兼務させることはできませんでした。改定後は、100床未満の病院では、看護職員1名と看護補助者1名を病棟に残すことにより、他の看護職員を1名を救急外来の対応をすることが出来るようになります。また、入院患者が30人以下の場合には、看護職員1名を残すことでも可能となります。しかし、このような対応は年間で6日間までであることから恒常的に行うことはできませんし、該当日の入院基本料は5%減額されます。

  • 医療従事者の常勤要件の緩和について
  • 現行では医師や看護師、理学療法士などの常勤配置が求められているものについて、改定後は週3日以上かつ週24時間以上の勤務を行っている複数の非常勤職員を組み合わせて常勤換算できる取扱いが盛り込まれます。ただし、2人以上の常勤職員の配置が要件とされているものについては一定数までに限られ、全て非常勤者で可とはならないものもあります。

    1. 医師の要件が緩和される施設基準
    2. 新生児治療回復室入院医療管理料,小児入院医療管理料、ハイリスク分娩管理加算、脳血管疾患等リハビリテーション料など

    3. 看護師の要件が緩和される施設基準
    4. 糖尿病合併症管理料など

    5. 理学療養士などの要件が緩和される施設基準
    6. 回復期リハビリテーション病棟入院料、地域包括ケア病棟入院料、脳血管疾患等リハビリテーション料など

  • 医師の勤務場所に関する要件緩和について
  • 現行では、救命救急入院料や特定集中治療室管理料などの施設基準においては、専任の医師が常時(24時間)治療室内に勤務していなければなりませんが、改定後は「看護師と連携をとって治療室内の患者の治療に支障がない体制を確保している場合には、一時的に治療室を離れても差し支えない」取扱いに変更されます。

  • 読み替え規定について
  • 現行の施設基準が廃止される入院基本料などについては、新しい入院基本料などに自動的に読み替えられる取り扱いがあります。 例えば、「一般病棟入院基本料7対1」は「急性期一般入院料1」に、「一般病棟入院基本料10対1+看護必要度加算1」は「急性期一般入院料4」に4月1日で読み替えられ改定後の点数が算定できます。9月末までに新しい看護必要度での評価を行い、再届出をすることとなります。しかし、改定後の基準の内容を猶予期間内に充たせなかった場合には、別の基準への変更届を提出する必要があります。

現行の施設基準については4月に新基準に読み替えられるものが多いことから、これらの取り扱いで慌てることはありません。4月に新設される施設基準の届出が出来るかどうか、出来る場合には何をいつまでに何を準備しなければならないかを確認しておくことが当面の重要な課題と思います。

竹田和行(株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役)

竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。