施設基準プロフェッショナルコラム

COLUMN30|2階建て、3階建ての施設基準 その2

平成31年4月15日

入院基本料、データ提出加算、診療録管理体制加算の関係

入院基本料とデータ提出加算と診療録管理体制加算の施設基準の関係は前回説明していますが、この関係は非常に理解しにくいものとなっておりますので、再度説明します。

急性期一般入院料、療養病棟入院料(200床以上)、特定機能病院入院料(一般病棟)、専門病棟入院料(10対1以上)、回復期リハビリテーション病棟入院料(5と6は200以上)、地域包括ケア病棟入院料の届出にはデータ提出加算の施設基準の届出が必要とされております。

このデータ提出加算ですが、2018年の改定時に届出が必要な病院の対象が拡大されましたが、2018年10月22日(施設基準の告示と取扱通知を変更するものは2018年11月19日付けで発出されております。以下、これらのものをすべて含めて「10月22日の通知など」とします。)に拡大対象を緩和する通知などが出され、混乱した病院もあったようです。(データ提出加算に関しての2018年の説明会資料はこちら)

改定時において、データ提出加算の対象とされた病院は1年間の猶予期間が設けられましたが、さらに特例があり「病院全体の許可病床数が50床未満、または病院全体で1病棟しかない場合。」には、2年間の猶予がされることとなっておりました。

しかし、療養病棟が1病棟で、他の病棟はデータ提出加算の対象とならないような(例えば、残り全部が精神病棟のような場合)場合で、病院全体として200床以上となるような病院もあると思われます。改定時には、このような場合のデータ提出加算の猶予は2019年3月31日までの1年間とされていましたが、10月22日の通知などで取り扱いが変更され、データ提出加算の対象となる病床数が200床以上あるかどうかで判断され、対象の病床数が200床未満の場合には猶予期間が2020年3月31日までの2年間に延長されました。(図①参照)

データ提出加算は、ただ単に届出を提出すれば済むものではありませんので、届出までの準備が少し厄介です。まず、「データ提出開始届出書(様式40の5)」を提出しなければなりませんが、この提出期限は年度間に4回(5月、8月、11月、2月の20日となりますが、同日が休日の場合には翌開庁日になります。)しか設定されておりません。もし、提出期限までにデータ提出開始届出書の提出が間に合わなかった場合には、次回は3か月後まで待たなければなりません。

そして、この届出を提出した翌月から起算して2カ月分(提出期限日が4回目の2月のスケジュールは別の考え方になっています。)の試行データをDPC調査事務局が提供する試行用形式チェックソフトにより作成し、指定する期日までにDPC調査事務局に提出する必要があります。提出されたデータに誤りがないかどうかのチェックがされ、問題ないことが確認されて初めて「データ提出加算に係る届出書(様式40の7)」が提出できることとなります。例としては、2019年5月20日に「データ提出開始届出書」を提出した場合は、「データ提出加算に係る届出書」が提出できるのは最短でも9月下旬頃となり、算定開始は10月以後となってしまいます。

よって、2020年3月末までのデータ提出加算の猶予の特例を受けた病院は、どんなに遅くても2019年11月20日までにデータ提出開始届出書(様式40の5)を提出しませんと、猶予期間の終了までにデータ提出加算に係る届出書(様式40の7)が提出できませんから、現在届出している入院基本料等の届出が維持できなくなってしまいます。

実際のところ、2019年3月31日までの1年間の猶予があった病院が、勘違いなどで2018年11月20日までにデータ提出開始届出書(様式40の5)を提出していなかったことから、データ提出加算に係る届出書(様式40の7)の提出が2019年4月1日までにできず、届出していた入院基本料を変更しなければならなくなったような事例がいくつが発生したようです。

仮に、療養病棟入院料1が200床ある病院がこのような事態に陥りますと、特別入院料基本料に変更しなければならなくなり入院基本料の加算である療養病棟療養環境加算なども算定できなくなります。入院基本料は最大で1810点の算定が576点となり1234点が減点され、療養病棟療養環境加算1の届出がありますとさらに132点が減点されますから、合計で1人1日あたり1366点(13660円)が減収となります。200人で1か月(30日)間ですと8196万円(1病棟で50床なら、その4分の1で2049万円)が減収となる計算になります。なお、これ以外にも落とし穴があり、他にも入院基本料の加算(医療安全対策加算や感染防止対策加算など)の施設基準の届出をしておりますと、算定できないものも多いことから、減収額はもっと増える可能性があります。

そして、ここには更に別の落とし穴があります。データ提出加算の届出には診療録管理体制加算の届出が必要です。診療録管理体制加算は基本診療料の施設基準で、届出に関しては特に定めがありませんから、実績期間が1か月間必要となります。4月1日にデータ提出加算の届出をするためには、同日までに診療録管理体制加算の届出をしなければなりませんので、実績は遅くても3月1日から開始しなければなりません。施設基準の要件に「「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(平成29年5月厚生労働省)に準拠した体制がなければならないとされておりますから、診療録が電子カルテ(すべての診療記録が電子化されているものに限られ、一部の書類が紙での管理になっている場合は含まれません。)の場合には、情報端末が物理的な方法で保護されていれば差し支えありませんが、紙カルテの場合には中央病歴管理室が設置され、その管理体制をしっかりとしていなければ、当該加算の届出ができません。(回復期リハビリテーション病棟入院料と地域包括ケア病棟入院料のみの届出、又はその両方のみの届出を行う病院においては、診療録管理体制加算1又は2の届出をしていない場合でも当該施設基準の要件を満たしていれば差し支えありません。この場合においては届出の必要はありませんが、当該施設基準の告示と通知に定める要件を満たしていなければならないことから、これらのことを説明できる資料などは用意しておく必要があります。)

もし、適時調査で診療録管理体制加算の施設基準に関して著しい不適切な事象が確認されますと、当該加算の届出が無効とされ、同時にデータ提出加算の届出も無効とされ、結果として入院基本料の届出を変更しなければならなくなります。

このように、一つの施設基準がダメとなってしまったときに、連鎖的にダメとなる施設基準があり、最終的に入院基本料がダメとなってしまうことがありますので、これらの仕組みをよく理解するとともに、施設基準の適切な管理を怠らないように、普段から病院全体で取り組む必要が求められます。

竹田和行(株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役)

竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。