施設基準プロフェッショナルコラム

COLUMN34|適時調査で指摘が多い事例について

令和2年2月3日

最近の適時調査において、不適切な状態が指摘される傾向として特に目立つ施設基準について説明します。

医療安全対策加算

  • 医療安全管理部門を設置していることが必要ですが、病院の組織図においてこの部門がどこにも明示されていない病院が多いようです。「設置していること」とありますから最低限として院内組織図に何らかの呼称において明示しておく必要があります。
    また、この部門を「安全管理のための委員会」と混同している病院も少なくないようですが、この施設基準のルールには、医療安全管理部門が行う業務として「医療安全管理対策委員会との連携」が必要のようにされておりますことから、委員会と部門は別々なものであることはご理解いただけると思います。
  • 医療安全管理部門の業務指針及び医療安全管理者の具体的な業務内容が整備されていなければなりませんが、これらのことが規定などの文章により明確になっていない病院が多いようです。
    病院にある「安全管理のための指針」と混同している病院も少なくないようですが、この指針の中に「医療安全管理部門の業務」と「医療安全管理者の具体的な業務内容」が細かく明示されていない場合が多いようです。
    「安全管理のための指針」は病院全体の医療安全の方向性を明示した内容のものが多いようですので、この2つの項目がきちんと記載されていないことも無理ありませんことから、「医療安全管理部門の業務指針」と「医療安全管理者の具体的な業務内容」は別冊で作成するようにした方が望ましいと考えます。
  • また、ルールでは「医療安全管理部門が行う業務に関する基準」と「医療安全管理者の行う業務に関する事項」として次のように明示されております。

    当然ですが、このルールに明示されている「医療安全管理部門の業務指針」と「医療安全管理者の具体的な業務内容」が活字として記載されていることを適時調査で一つ一つチェックされますので、もう一度、院内で該当する規定などを確認されることをお願いいたします。

    • 医療安全管理部門が行う業務に関する基準
    • ア 各部門における医療安全対策の実施状況の評価に基づき、医療安全確保のための業務改善計画書を作成し、それに基づく医療安全対策の実施状況及び評価結果を記録していること。
      イ 医療安全管理対策委員会との連携状況、院内研修の実績、患者等の相談件数及び相談内容、相談後の取扱い、その他の医療安全管理者の活動実績を記録していること。
      ウ 医療安全対策に係る取組の評価等を行うカンファレンスが週1回程度開催されており、医療安全管理対策委員会の構成員及び必要に応じて各部門の医療安全管理の担当者等が参加していること。

    • 医療安全管理者の行う業務に関する事項
    • ア 安全管理部門の業務に関する企画立案及び評価を行うこと。
      イ 定期的に院内を巡回し各部門における医療安全対策の実施状況を把握・分析し、医療安全確保のために必要な業務改善等の具体的な対策を推進すること。
      ウ 各部門における医療事故防止担当者への支援を行うこと。
      エ 医療安全対策の体制確保のための各部門との調整を行うこと。
      オ 医療安全対策に係る体制を確保するための職員研修を企画・実施すること。
      カ 相談窓口等の担当者と密接な連携を図り、医療安全対策に係る患者・家族の相談に適切に応じる体制を支援すること。

  • 業務改善計画書を作成しなければなりませんが、これが作成されていなかったり、作成されていてもかなり不十分なところが多いようです。
    また、業務改善計画書を「インシデントレポートとアクシデントレポートの個別の改善策」と誤解されているケースもあるようです。「計画書」ですから、医療安全の向上に向けて将来的に組織的に「どのようなこと」を「どこの部署(誰)」が「どのように」して「いつころまでに」実施するのかを明示しておくべきものと考えられます。
  • 医療安全対策に係る取組の評価等を行うカンファレンスが週1回程度開催されることが必要ですが、このカンファレンスで協議される内容が不適切な事例が多いようです。ただ単に形式的に開催されているだけで、「クレームのこと」とか、「医療事故の発生件数の報告程度」しか議題にされていないものが見受けられますが、内容としては施設基準のルールにはっきりと「医療安全対策に係る取組の評価等を行う」とされているため、安全対策の取り組み事項がどうなっているかの評価が議題に含まれていなければなりません。
    前述した業務改善計画書の進捗状況などを検討・評価することなども含まれるものと考えられます。

感染防止対策加算

  • 感染防止対策部門を設置(医療安全対策加算に係る医療安全管理部門をもって感染防止対策部門としても差し支えありません。)していることが必要ですが、病院の組織図においてこの部門がどこにも明示されていない病院が多いようです。
    「設置していること」とありますから最低限として院内組織図に何らかの呼称において明示する必要があります。
    また、この部門を「院内感染防止対策委員会」と混同している病院も少なくないようですが、この施設基準のルールには、上記にあるように「医療安全対策加算に係る医療安全管理部門をもって感染防止対策部門としても差し支えない」ようにされておりますことから、委員会と部門は別々なものであることはご理解いただけると思います。
  • 院内感染管理者若しくは感染制御チームの具体的な業務内容が整備されていなければなりませんが、これらのことが文章により明確になっていない病院が多いようです。
    病院にある「感染防止対策の業務指針」と混同している病院も少なくないようですが、この指針の中に「院内感染管理者若しくは感染制御チームの具体的な業務内容医療安全管理部門の業務」が細かく明示されていないものが多いようです。
    感染防止対策の業務指針は病院全体の感染防止対策の方向性を明示したものが多いようですので、この項目がきちんと記載されていないことも無理ありませんことから、「感染防止対策の業務指針」と「院内感染管理者若しくは感染制御チームの具体的な業務内容医療安全管理部門の業務」は別冊で作成するようにした方が望ましいと考えます。
  • 院内の抗菌薬の適正使用を監視するための体制を有すること。特に、特定抗菌薬(広域スペクトラムを有する抗菌薬、抗MRSA薬等)については、届出制又は許可制の体制をとることとされておりますが、許可申請書や届出書が無いような事例が見受けられます。
  • 感染制御チームにより、1週間に1回程度、定期的に院内を巡回し、院内感染事例の把握を行うとともに、院内感染防止対策の実施状況の把握・指導を行うことが必要です。この巡回は感染制御チームのメンバーが最低でも2名以上で行う必要がありますが、2名未満で巡回を行っている事例があるようです。
  • また、巡回先ですが、病棟ごとの院内感染や耐性菌の発生のリスクの評価を定期的に実施している場合(下記を参照)を除き、全ての病棟を毎週巡回しなければなりませんが「病棟数が多い」とか「面倒」などの理由で、リスク評価を一切行うことなくそれぞれの病棟を月に1回程度しか巡回していないところがあるようですから注意してください。

    • (参考)平成28年3月31日付け疑義解釈通知より(平成28年4月25日に修正あり)
    • 問57
      感染防止対策加算において、感染制御チームによる1週間に1回程度の院 内巡回が施設基準として規定されたが、
      ① 院内の巡回は施設基準で定められている構成員全員で行う必要があるのか。
      ② 院内巡回は、毎回全ての部署を回らなければならないのか。

      (答)
      ① 全員で行うことが望ましく、少なくとも2名以上で行うこと。
      ② 必要性に応じて各部署を巡回すること。なお、各病棟を毎回巡回することとするが、耐性菌の発生状況や広域抗生剤の使用状況などから、病棟ごとの院内感染や耐性菌の発生のリスクの評価を定期的に実施している場合には、少なくともリスクの高い病棟を毎回巡回し、それ以外の病棟についても巡回を行っていない月がないこと。患者に侵襲的な手術・検査等を行う部署についても、2月に1回以上巡回していること。

      なお、この疑義解釈通知は平成28年3月31日では下記のようになっておりましたが、平成28年4月25日に上記のように訂正されておりますので、注意してください。

      (問57)
      感染防止対策加算において、感染制御チームによる1週間に1回程度の院内巡回が施設基準として規定されたが、
      ① 院内の巡回は施設基準で定められている構成員全員で行う必要があるのか。
      ② 院内巡回は、毎回全ての部署を回らなければならないのか。

      (答)
      ① そのとおり。
      ② 必要性に応じて各部署を巡回すること。なお、少なくとも各病棟を毎回巡回するとともに、病棟以外の各部署についても巡回を行っていない月がないこと。

これらの2つの施設基準に共通して言えることですが、所定の研修を受けた看護師(「感染防止対策加算2」については、所定の研修の受講義務はありません。)を担当者にしている病院が多いようです。

しかし、研修ではこれらの施設基準のルールに関しては教えていただけるものでもないでしょうから、不適切事項に関しての指摘を受けた病院のほとんどにおいて、担当者が施設基準の告示と通知及びそれに付随する疑義解釈通知を見ていないことが原因と考えられますので、ご自分の病院の担当者がこれらのルールを熟知されているかどうか、もう一度確認されるようにお願いいたします。

竹田和行(株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役)

竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。