施設基準プロフェッショナルコラム

COLUMN39|届出施設基準の自己点検結果報告書について

令和3年7月9日

1.報告書の書式と提出時期

毎年、この時期になりますと施設基準等の状況確認のため、7月1日現在の状況の報告、いわゆる「71定例報告」を提出することとなっております。

今年は、立ち入りの適時調査を原則として実施しないこととされておりますことから、立ち入りの調査に換えて、病院側の自己点検による報告書を、この時期にあわせて提出することとされました。

提出対象の施設基準につきましては、厚生労働省のホームページに6月29日に掲載され、適時調査において「重点的に調査を行う施設基準」の対象と同じとなっております。

また、提出対象の報告書の様式も公開されており、厚生労働省のホームページの他に、各厚生局のホームページにも掲載されているところがあります。
その中から、ご自分の病院において届出した施設基準で該当するものを選択して、印刷して記入のうえ、所定の期日(71定例報告とは別の期日になっているところがあります。厚生局から送付された文書に記載がありますが、都道府県により期日が違うようです。)までに厚生局に提出することとなります。

71定例報告の期日は7月30日とされたり、8月2日とされているようですが、自己点検結果報告書の期限は別になっているところもありますので、厚生局から送付された文書をよく確認してください。

なお、提出期日の延長を認めている厚生局もあるようですので、すべての施設基準について、自己点検が間に合わない場合には、提出期日の延長をしていただき、時間がかかっても正確な点検をお願いいたします。

2.自己点検

自己点検の様式は、適時調査の時に厚生局職員が使用する調査書とほぼ同じものになっており、施設基準の要件ごとに「適」か「否」を選択して該当する方に◯印をつけるだけのごく簡単なものになっております。

施設基準については、要件に合致しているかを毎月確認いただく必要があります。そして、届出後に要件を満たさなくなったことが確認できた場合には、変更届か辞退届を提出して、正しい届出を行い正しい診療報酬の請求をしなければなりません。届出した施設基準の点数をそのまま算定するためには、報告書の「適・否」欄においては、すべての項目で「適」に◯がつかなければおかしいことになります。

しかし、ここで注意しなければならないことは、安易な気持ちで施設基準の実態の確認を怠ったり、確認作業が面倒だからなどの理由で判定を甘くして、何でもかんでも「適」◯をつけてしまい、不正確な報告書類を厚生局に提出するようなことは絶対に行ってはいけません。
後々、そのようなことが発覚いたしますと、「虚偽報告」「隠蔽」「不正請求」のような疑いを持たれ、個別指導の対象にされるばかりでなく、監査の対象とされる可能性も十分にあり、最悪の結果としては保険医療機関の取り消しの処分を受けることもあり得ることです。

入院基本料については、毎月の算定額も大きいことから、過請求が発生してその期間が何ヶ月にもなったり、それを超えて1年以上にも及びますと、返還対象となる金額も何千万円や何億円のように膨れ上がることもあり得ます。そして、施設基準の要件を満たさないことを知っていたにもかかわらず、変更届や辞退届を退出せずに、診療報酬を請求したとなりますと、悪意がありますから不正請求と判断され監査の対象にされてしまいます。監査結果により返還の金額も何千万円を超過するようでしたら、保険医療機関の取り消しの要件も十分に満たしますので、慎重な対応をしなければなりません。

また、適時調査については「実地での調査は原則中止」とされておりますことから、原則に当てはまらないような事例、例えば、内部告発などがあった場合には、原則から外れるでしょうから、緊急に立ち入りでの適時調査が実施されることもあり得ます。

3.新型コロナウイルスの特例

自己点検の結果、施設基準の要件を満たさないようなことが発見される場合があると思われますが、新型コロナウイルスに関する特例に該当している場合には、要件から逸脱していても変更届や辞退届を提出する必要はなく、届出済みの施設基準に関する診療報酬をそのまま算定することが可能です。

このような特例に該当している場合には、自己点検結果報告書の欄外に「その旨を付記」された方が、後々になっても、状況が理解されやすいものと思われます。

新型コロナウイルスに関する特例で、施設基準の取り扱いに該当する主たるものは下記の通りです。

  • 特例に該当する場合
    1. 新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れた施設
    2. 上記施設に職員を派遣した施設
    3. 臨時休校などにより職員が勤務困難となった施設
    4. 職員が感染又は濃厚接触により出勤できない施設
  • 対象の範囲
  • 該当職員がいない病棟も全てが対象(複数病棟あっても、どこかの病棟で1名でも該当者がいれば、病院すべての病棟が該当します。)

  • 該当する期間
  • 対象期間は該当日を含む月単位(該当日が1日間だけであっても、その月全体が対象となります。)

  • 緊急事態宣言の場合
  • 全国すべての施設が対象(発出が1カ所もだけであっても、全国すべての保険医療機関が対象となります。)
    例えばですが、2021年7月11日まで沖縄県に緊急事態宣言が発出されておりますが、東京の再発出も含め8月22日まで延長されたといたしますと、2021年7月も8月も全国すべての保険医療機関が特例に該当することとなります。
    2021年1月以後で整理いたしますと、1月18日から3月21日まで、及び4月25日から8月22日(解除予定)までの期間において緊急事態宣言が発出されておりますことから、2021年1月から8月までのすべての月において、全国すべての保険医療機関で特例の適用を受けることとなります。

  • 特例の内容
    1. 定数超過入院に該当しても入院基本料の減額が不要
    2. 月平均夜勤時間数が79.2時間を超えてもそのまま算定が可能
    3. 看護要員数、看護師比率が9割未満となってもそのまま算定が可能
    4. DPC病院の要件不足でもそのまま算定が可能
    5. 平均在院日数、重症度 医療・看護必要度、在宅復帰率、医療区分2と3の患者割合が要件不足でもそのまま算定が可能
    6. 手術の実績件数、利用者の診療実績が要件不足でもそのまま算定が可能

  • 特例に該当する場合
  • 新型コロナウイルス感染症に係るワクチンについて、市町村等の計画又は要請により、自施設内で接種を行った保険医療機関等又は当該保険医療機関等に職員を派遣した保険医療機関等について、それぞれ、令和2年8月31日付事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その 26)」1.(2)①イ「アに該当する医療機関等に職員を派遣した保険医療機関等」に該当する。

  • 特例に該当する場合
  • 新型インフルエンザ等対策特措法(平成 24 年法律第 31 号)第 31条の4第1項の規定に基づき、新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置(以下、「重点措置」という。)を実施すべき区域として公示された区域において、重点措置を実施すべき期間とされた期間については、当該区域を含む都道府県に所在する全ての保険医療機関、保険薬局及び訪問看護ステーションについて、8月31日事務連絡の1(2)①の対象医療機関等とみなすこととする。なお、重点措置を実施すべき期間とされた期間については、当該期間を含む月単位で取り扱うこととする。

4.71定例報告の様式

報告対象の様式の中に「別添1-2」がありますが、これについては上記1で説明した自己点検結果報告書とは違い、今までも毎年記載して提出することとなっておりました。
この中で下記の部分について注意が必要です。

この様式は、「ア」か「イ」のどちらかに◯印を記載するものです。 自己点検結果報告書の記載対象とならない施設基準も含め、届出したすべての施設基準の内容を自己点検していただき、適否について判断し、すべての内容において基準を満たしていると判断された場合には、「ア」に◯がつけられます。

しかし、施設基準のルールに1項目でも要件を満たしていないものが存在すれば、「イ」に◯をつけ、下部の欄に該当する施設基準名を記載し、変更届や辞退届を提出する必要があります。

この記載においても、上記2で説明したように、施設基準の実態の確認を怠ったり、面倒だからなどの理由で判定を甘くして、安易な気持ちで「ア」に◯をつけてしまい、不正確な報告書類を厚生局に提出するようなことは絶対に行ってはいけません。

後々、そのようなことが発覚いたしますと「虚偽報告」「隠蔽」「不正請求」のような疑いを持たれて厳しい指導や処分を受けても言い訳ができないこととなります。

竹田和行(株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役)

竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。