施設基準プロフェッショナルコラム

COLUMN01|診療報酬改定への備え

平成28年1月22日

今回は、診療報酬改定が迫ってきていることから「事前に何をしておいたほうがよろしいのか」また、この時期には看護職員が減少傾向にあることから、「月平均夜勤時間数が72時間を超えてしまった時の対応」について少しお話をさせていただきます。

診療報酬改定に備えて

次回の診療報酬改定が実施される4月がすぐそこに迫ってまいりました。
2年に1度のことでありますが、事務を担当する事務長さんなどにとっては、短期間で新しい制度の内容を理解して院内の体制を整備しなければならず、とても大変な時期になります。
診療報酬改定の内容は、3月上旬(前回は3月5日)に厚生労働省から公表されます。公表後はどの病院も蜂の巣を突っついたような騒ぎで忙しくなりますが、特に施設基準は届出を提出しないと算定できませんから、届出可能かどうか、届出して増収になるかどうか、準備はどうすればよいのかの分析・判断が短期間で出来るかが勝負となります。

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特掲診療料の施設基準は原則的に実績が不要ですから、4月1日に実態が整っていれば届出可能なため、そんなに慌てる必要はありません。 基本診療料の施設基準は例外を除き1ヶ月間の実績が必要となり、4月1日から算定するのであれば、遅くても3月1日から実績を整えないと間に合いません。改定時の届出には、いつも特例の措置があり(4月14日までに届出すれば1日に遡って算定することが出来ます。)今回もこの措置が盛り込まれる可能性が高いので、届出書の作成には少しだけ余裕が生まれるものと思います。

「3月上旬に発表されて、3月1日からの実績作りなんて不可能ですよ。」の声が聞こえてまいりますが、入院基本料のように看護職員の1ヶ月間の配置状況などが要件に含まれているものなどは、新たに実績を作ろうとすると確かにその通りです。 しかし、実績とは、あらためて要件に合わせて作り直ししなくても、実態が要件に合っていれば認められるものが大半ですから、現在の実態が診療報酬改定後の施設基準の要件を満たして(病院の実態が届出予定のものを上回っている状態)いれば届出可能なことが多いのです。

なお、入院基本料の看護師数などは1ヶ月間の平均値や合計数などで評価されるものも有りますので、急いで職員配置を変更したりすれば、公表時における病院の実態が基準を下回っていたとしても、3月上旬のマイナス部分を中旬以降のプラスで補えるケースもあります。
また、すでに診療報酬改定の内容の一部が報道されているものもありますし、3月の厚生労働省からの公表までにはもっと具体的な方向性が報道されることでしょうから、結果として無駄になるかもしれませんが、届出を仮定して事前に職員配置などを準備してしまうことも一つの方策です。ここで注意したいのが、既に届出している施設基準を変更する場合には、新しいものが届出できなかった事を考慮して、現在の基準を維持したうえで新しく届出予定の基準もクリアーさせておくことが無難です。

今回の診療報酬改定でも7対1入院基本料の要件の厳格化が盛り込まれそうですので、7対1を維持できない場合には、どのような入院基本料などが届出可能であるかのシミュレーションを早めにしておくことをお勧めいたします。

72時間をオーバーしても大丈夫

特にこの時期、看護部長さんの心配事と言えば「月平均夜勤時間数を72時間以下に管理すること」でしょう。

看護職員の方も生身の人間ですから、病気や怪我による予定外の休み、不意な退職などによる人員減少などのリスクから解放されることはありません。このことから、病棟勤務する看護職員数を維持することはかなり大変なことと推察いたします。

多くの病院においては、この時期から新規採用者の補充があるまでの数カ月間は、一年の中でも看護職員数が最も少なくなるようですので、月平均夜勤時間数を維持することがかなり厳しく(2月は28日間しかないので、計算の都合で前後の月より数字は落ち着くことが多くなります。)なるものと推測いたします。
看護部長さんの大きな悩みは、月平均夜勤時間数が72時間を維持できなくなりますと、入院基本料が減額されてしまいますので、病院の収入は大きく減少し経営に与える影響は多大なものになってしまうことでしょう。

しかし、入院基本料の届出が受理された後では、その入院基本料を変更しないままであれば、72時間の維持は毎月でなくても良いとされています。
これは、届出後の特例により「3カ月を超えない1割以内の変動の場合には、変更届に該当しない。」とされているからです。「1割以内とは」79.2時間を意味し、「3カ月を超えない」とは連続して4カ月にならないことを意味いたします。

例として、届出後の翌月79時間、2カ月目79時間、3カ月目79時間になっても、4カ月目に72時間以下になれば何の問題もありません。極端な例として、4カ月に1回を72時間以下にして、他の月を79.2時間以下にしていれば届出した入院基本料がそのまま算定できる訳です。4カ月に1回ですから、年3回だけ72時間以下にすればよいこととなります。

しかし、一度72時間を超えてしまいますと「あと何人増えればクリアーできるのか」「あと何人少なくなっても1割以内に留まるのか」などの不安は増大してしまいます。
これらの不安を少しでも解消するためには、「様式9」により病棟の実態を詳しく分析することが大切です。看護職員の夜勤時間数と夜勤従事者数を細かく検証し、不足する人員数と過剰な夜勤の存在などを把握して、現状の職員による勤務変更や配置換えで乗り切れないかを検討しなければなりません。看護職員を募集しても直ぐに補充される保証はありませんから、これらの内部努力により72時間の壁をクリアー出来ることが確認できたのであれば、早い段階で実行に移してしまうことが得策でしょう。

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今回のお話で診療報酬改定までの準備と月平均夜勤時間が72時間を超えても大丈夫なケースについては少しご理解いただいたものと思いますので、次回は、「足りているの思い込みは大変危険」と「月平均夜勤時間数は変えられる」の二つのテーマについてお話をさせていただきたいと思います。

竹田和行(株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役)

竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。