施設基準プロフェッショナルコラム

COLUMN05|届出準備は始まっています

平成28年4月27日

診療報酬改定に伴う新規の施設基準の届出も済み、一段落して落ち着きたいところですが、来月提出する新しい点数による診療報酬明細書の作成や点検作業も迫っていることから、担当者の皆様にはまだまだ気が抜けない日々が続くものと拝察いたします。
それでは、今回の改定で一般病棟の入院基本料に関して、ご留意いただきたいことにつきまして少しお話をさせていただきます。

一般病棟7対1入院基本料

何と言っても、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度(以下、「看護必要度」と表現させていただきます。)の評価の仕組みが変更されたことと、要件を満たす患者割合が25パーセント(6か月間の経過措置あり。許可病床数が200床未満の病院では2年間に限り23パーセントでも可。)に引き上げられたことが多くの病院に痛手となっているようです。数多くの病院より「20パーセントは何とかなりますが、25パーセントは苦しい。」の声が聞こえてきております。

看護必要度の評価は従前のAとBの2項目に加え新たにC項目が追加されました。評価もA項目2点かつB項目3点を満たすことが要件でしたが、今回からA項目だけで3点、C項目だけで1点の要件が加えられました。この3つの要件のどれかを満たせば割合にカウントできることとなります。従前ではA項目が3点以上あってもB項目でさらに3点必要でしたが、改定後はA項目で3点以上に該当していればB項目の点数に関係なく要件を満たすこととされました。

看護必要度評価

始めに注目すべきところはA項目に新設された「救急搬送後の入院」です。
これは自治体の救急車で搬送された患者さんが入院した場合には、当日と翌日にA項目に2点の評価がされます。
もし、その患者さんが創傷処置、心電図モニターの管理、シリンジポンプの管理など、さらに1点以上の要件を満たすようでしたら、2日間はA項目だけで3点の要件をクリアーすることになります。ただし、病院の救急車、自家用車やタクシーなどでは要件に該当いたしませんので、自治体の救急車で搬送された患者さんしかカウントできないことに注意が必要です。

次に注目すべきところはC項目です。この項目では手術などの評価がされており、開頭、開胸、開腹など該当する手術を実施すれば、自動的に一定の期間(開頭、開胸手術の7日間が最高で、最低は2日間となっています。)1点の評価をすることとなっています。C項目は1点だけで要件を満たしますから、手術をコンスタントにこなしている病院にはかなり有利な評価となりました。現実に、C項目の新設により、従前よりも看護必要度を満たす患者割合が上昇した病院も存在いたします。

もう一つの要件変更は在宅復帰率が80パーセントに引き上げられました。こちらの要件はほとんどの病院においてクリアーされておりますので、あまり心配する必要はないようです。しかし、看護必要度の要件などとは違い、この80パーセントの要件には「経過措置」や「1割以内の一時的な変動による特例」が適用されないため、4月に即適用となり、わずかでも80パーセントを下回りますと、要件不足とされてしまいますので、手放しで喜ぶのは少し危険です。引き続き、要件にカウントできる退院先の確保と数字管理には注意をしなければなりません。

一般病棟10対1入院基本料

看護必要度の評価の仕組みは7対1のところでお話ししたものと同様です。要件を満たす患者割合につきましては「看護必要度加算」や「急性期看護補助体制加算」の届出をしている場合において、要件を満たす患者割合に変更がありました。

「急性期看護補助体制加算」は要件を満たす患者割合が6パーセントとされましたが、この数字をクリアーできない病院は数少ないものと思いますので、これに関する説明は省略させていただきます。

看護必要度加算

次に「看護必要度加算」ですが、点数設定が従前の「看護必要度加算1と2」の2ランクから「看護必要度加算1から3」の3ランクに変更されました。
新基準の看護必要度加算1として患者割合24パーセント以上の要件が新設され、旧基準の看護必要度加算1(患者割合15パーセント以上)は新基準の看護必要度加算2(割合18パーセント以上)に、旧基準の看護必要度加算2(割合10パーセント以上)は新基準の看護必要度加算3(割合12パーセント以上)に自動的に読み替えとなっております。

6か月間の経過措置がありますので、新基準における数字を満たさなくても、旧基準の数字を満たしていれば9月末日まで新しい点数で算定可能です。

また、一般病床が200床以上の病院においてはデータ提出加算の届出が義務となりました。こちらは1年間の経過措置がありますので、それまでにはデータ提出加算の届出をするように準備いたしましょう。

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新しい看護必要度の実施時期

一般病棟7対1入院基本料や看護必要度加算の届出をしていた病院においては、どんなに遅くても10月3日(今年は1日と2日が休日のため。なお、14日までの届出の特例は改定時の4月だけで、他の届出時期には適用されません。)までには届出をいたしませんと引き続き点数を算定することができなくなります。

看護必要度については1か月間の実績(月初めから末日までの期間において要件を満たす患者割合を計算するため)を作らなければ届出の要件を満たせません。遅くても10月3日までの届出ですから、それ以前であれば何時届出を提出しても差し支えありません。ただし、必要な要件として「看護必要度の評価は院内研修を受けた者が行う」とされておりますので、評価する看護師などへの研修は遅くても8月末までに終了させて、9月1日からは改定後の評価票での評価を実施しなければなりません。また、研修を講義する担当者については「所定の研修を終了したもの、又は評価に習熟したものが望ましい。」とされております。「望ましい」ですから義務ではないのですが、自己学習で人に教えられる知識を習得するのは困難でしょうから、通常は看護協会などが実施する研修に参加した方が講義するのが一般的です。

それでは、実際には何月からの届出が可能かと申しますと、看護協会などの研修は、前回改定時には6月下旬に実施されたようです。もし、今回もこのスケジュールが適用されると仮定いたしますと、早くても7月の実績で8月の届出からとなるでしょう。

なお、ここで注意していただきたいのが、届出時期が8月から10月の3か月間のどこの月にも、危険要素が含まれているということです。

一番早い7月実績8月届出のタイミングでは、6月中に看護師など対しての評価者研修を終了して、7月1日から新しい評価票に切り替えしなければなりませんが、6月末までにすべての評価者に研修を終了させることは看護部側でかなりの努力しなければ実施困難です。

次に8月実績9月届出のタイミングですが、評価者への研修は十分に間に合いますので、無難なタイミングのように見えます。しかし、看護必要度の要件を満たす患者さんは比較的重症の方が該当することになります。手術後の患者さんなどが沢山存在しなければ数字は伸びません。例年、どこの病院においても8月に夏休み休暇を取得する医師が多くなる傾向があるようです。そうなりますと、手術件数が減りますので、看護必要度の要件を満たす患者数が伸びるとは思えません。新基準では手術の実施を評価する「C項目」が伸びるかどうかが数字を左右する可能性が高いと思われます。

それでは、9月実績10月届出のタイミングですが、評価者の研修も終了し、医師の夏休み取得も落ち着いていると思われますので、一見絶好のタイミングのように見えますが、他の月より危険度のリスクは高いと考えます。なぜかと申し上げれば、9月30日までの実績数値を計算して、必要な様式をすべて記載し、添付書類もすべて用意(単に看護必要度の要件を満たす患者割合の数字だけを届出するのではなく、様式9を含めた入院基本料の届出用紙をすべて作成して提出することとなります。)することとなりますので、2日間の期間で準備することは並大抵のことではないと思いますし、9月だけの一発勝負ですから万が一、数字が要件を下回ってしまったりいたしますと、もう後がないですから、届出は出せないこととなります。届出が出せなければ点数は算定できませんので、他の基準に変更するなどの対応が必要となり、病院収入は減収となってしまい経済的な打撃に見舞われることとなります。そのようなリスクを承知してでも9月実績で届出したいとのことでしたら、事前に記載できる様式や準備できる添付書類などを整理しておき、様式9も前日までのデータ入力を頻繁にしておくなどして、10月1日、2日の二日間で作業が完了する様に十分な準備をされることをお勧めいたします。特に、様式9は細かなデータ入力が必要となりますので、より慎重に対応するようにいたしましょう。

2年に1回の大切な時期でもあり、病院の収入に直結することでもありますので、看護部、医局、事務部方々をはじめとして病院全体が譲り合って連携して、届出のタイミングを模索されることをお勧めいたします。

このほかにも、お話しさせていただきたい改定内容もございますが、また機会がございましたらお話しさせていただきたいと思います。

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竹田和行(株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役)

竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。