施設基準プロフェッショナルコラム

COLUMN13|非常勤と兼務者の夜勤計算

平成29年3月1日

非常勤者と兼務者の月平均夜勤時間数の計算

平成28年の診療報酬改定により、入院基本料の月平均夜勤時間数の計算方法が変更となっていることは、皆様もよくご存じのことと思われます。
今回は、変更となった箇所と誤りやすい事例についてご説明いたします。

  • 夜勤従事数にカウントできる要件
    1. 改定前
      16時間を超える夜勤を行った者
    2. 改定後
      10対1以上の病棟では夜勤を16時間以上、13対1以下の病棟では夜勤を8時間以上行った者
    3. 改定前は8時間の夜勤を3回以上行っていなければ夜勤従事者数に計上できなかったのですが、改定後は10対1以上の病棟では2回、それ未満の病棟では1回の夜勤を実施すれば、夜勤従事者数に計上できることとなります。

  • 非常勤者と兼務者の夜勤従事者数の計算方法
    1. 改定前の計算方法
      「病棟に勤務していた総勤務時間数」/「常勤者の所定労働時間数」
    2. 改定後の計算方法 
      「病棟における夜勤時間数」/「病院内での総夜勤時間数」

    非常勤者の場合では、病棟の勤務時間数が所定労働時間の半分しかなかった者は、改定前では夜勤従事者数は「0.5人」程度にしか評価されませんでしたが、改定後は夜勤従事者数は「1人」として評価できるようになりました。

    このため、常勤看護師1人を雇用して、病棟の夜勤を72時間行わせた場合には、夜勤従事者数は「1人」となりますが、仮に、所定労働時間数の半分程度の非常勤者2人を雇用して、病棟の夜勤をそれぞれ36時間(2人合計で72時間)行わせた場合、夜勤従事者数は「2人」に計算できることとなりますので、月平均夜勤時間数は減少します。

    兼務者の場合では、病棟勤務が所定労働時間の半分で日勤の外来勤務も所定労働時間の半分のような勤務実態では、改定前では夜勤従事者数は「0.5人」程度にしか評価されませんでしたが、改定後では夜勤従事者数は「1人」として評価できるようになりました。

    このことから、現状では夜勤従事者数の計算は病院単位で行われるため、仮に、看護師が2カ所の病院と雇用契約し、双方の病院の勤務時間を半分程度にして、病棟の夜勤時間を16時間(13対1以下の病棟では夜勤を8時間)以上行っていれば、勤務時間数は2か所の合計で1人前程度しかないにも関わらず、双方の病院で夜勤従事者数は別々に「1人」が計上出来ることとなります。

    また、病棟と外来等を兼務してする場合の考え方ですが、2人の常勤看護師を雇用して、1名を病棟専従として病棟の夜勤を72時間行わせて、1名を外来日勤専従にした場合、つまり、病棟も外来も専従にして兼務しなかった場合には、夜勤従事者数は当然ながら病棟勤務者の「1人」しか計上できません。しかし、仮に、2名とも病棟と外来の兼務者として、病棟の夜勤を36時間(2人合計で72時間)行わせて、病棟業務に所定労働時間数の半分程度、外来日勤業務に所定労働時間数の半分程度の勤務を行わせた場合には、夜勤従事者数は「2人」が計上出来ることとなりますので、月平均夜勤時間数は減少いたします。

    常勤換算した勤務人員数が同じであっても、雇用や配置方法が違うだけで夜勤従事者数が多くなったりすることが発生してしまうような、不思議な計算方法となっております。 なお、外来等の日勤を兼務する場合の計算方法について、一つ誤りやすいものがありますので、注意が必要です。

    先にご説明いたしました、「改定後の計算方法」の計算式をご覧いただきたいと思います。

    この計算式の分母の部分には、病院内で勤務した夜勤時間数の合計を計上することとなりますが、外来等の日勤帯のみを勤務したときでも、勤務時間の始まりから終わりまでの中に病棟で設定した16時間の夜勤時間枠に食い込んでしまう部分がありましたら、その分をこの計算式の分母の部分に計上しなければなりません。勤務開始から終わりまで、1時間の昼休みを挟んでトータルで9時間にしているように場合には、必ず1時間が夜勤帯に含まれることとなりますので、様式9を作成するときに注意が必要です。勤務時間が8時間を超えない場合でも、早出や遅出のような勤務になっていたり、病棟で設定した夜勤時間数の16時間枠が通常の夜勤時間帯より前後にずらしているような場合(例えば、「18時始まりで翌朝10時まで」や、「16時始まりで翌朝8時まで」のように場合。)にも、夜勤時間帯に含まれる部分が出てまいりますので、併せて注意してください。

    改定前の考え方では、兼務者については病棟に勤務した時間数だけを計算式での計上対象としておりましたので、計算誤りは発生しにくかったようですが、改定後は、病棟以外の部署の勤務時間を把握して、16時間の夜勤枠に含まれる勤務をしている場合には、様式9の最下段の「総夜勤時間数」に該当する数字を計上する必要があり、兼務先での勤務時間管理もしなければならなくなったために、このような見落としが発生しやすくなっております。

    様式9の記載事例を下記の図にお示しいたしましたので、参考にしてください。
    (ピンク色の部分が要注意箇所です。)

竹田和行(株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役)

竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。