COLUMN17|院内掲示のルール確認 その1
平成29年7月31日
保険医療機関の病院における院内掲示について
病院には数多くの院内掲示が張られておりますが、保険医療機関の病院として必ず必要なものは、厚生局の適時調査や個別指導でのチェック事項となっております。
しかし、院内掲示につきましては、そのルールがいろいろなところに明記されていることから、全てを正確に理解することはかなり困難です。
今回は、保険医療機関の病院として(他の法令に関するものは除きます)の院内掲示について説明します。
- 保険医療機関の標示
- 入院基本料に関する事項
- 入院患者数42人の一般病棟で、一般病棟入院基本料の10対1入院基本料を算定している病院の例
- 厚生労働大臣が指定する病院の病棟並びに厚生労働大臣が定める病院、基礎係数、暫定調整係数、機能評価係数Ⅰ及び機能評価係数Ⅱ(平成24年厚生労働省告示第165号)別表第一から別表第三までの病院の欄に掲げる病院であること
- 地方厚生(支)局長への届出事項に関する事項
- 入院時食事療養(Ⅰ)に係る食事療養を実施している病院の例
- 明細書の発行状況に関する事項
- 保険外負担に関する事項
保険医療機関として指定された場合には、病院に限らずすべての医療機関に「保険医療機関」の標示が義務付けられています。根拠につきましては、意外に知られていないと思われますが「保険医療機関及び保険薬局の指定並びに保険医及び保険薬剤師の登録に関する省令」と言われるものがあり、その中の第7条に「保険医療機関又は保険薬局は、その病院若しくは診療所又は薬局の見やすい箇所に、保険医療機関又は保険薬局である旨を標示しなければならない。」とされております。
よって、病院の入り口付近などに外から見やすいように「保険医療機関」とわかるように標示しなければなりません。最近では、他の公費適用(生活保護法や労災など)などの標示と一緒に掲示しているところが多くなっております。
次に、「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」の通知に明記されていることについて説明します。
入院基本料に関する届出内容の概要、つまり看護要員の対患者割合と看護要員の構成についての掲示です。具体的には下記のようになります。
「当病棟では、1日に13人以上の看護職員(看護師及び准看護師)が勤務しています。なお、時間帯毎の配置は次のとおりです。」
朝9時~夕方17時まで、看護職員1人当たりの受け持ち数は6人以内です。
夕方17時~深夜1時まで、看護職員1人当たりの受け持ち数は14人以内です。
深夜1時~朝9時まで、看護職員1人当たりの受け持ち数は14人以内です。
この掲示については、同じ入院基本料を算定する病棟が複数ある場合には、それぞれの病棟について掲示が必要です。このような場合では様式9は複数病棟まとめて計算することになっておりますが、この掲示については病棟ごとの状態について掲示しなければなりませんので注意してください。
なお、この掲示は病棟に入院している患者数と、勤務している看護職員数などを比較して受け持ち人数などを計算いたしますが、どの時点での数字を当てはめるかについての明確な決まりはありません。
毎日、その日の入院患者数と看護職員数を計算して掲示を書き換えている病院もあれば、様式9により計算された月単位の数字で、毎月掲示を張り替えている病院もあります。また7対1や10対1の基準により、最低限必要な看護職員数によって計算された数字を勘案して掲示している病院もあります。
一番目が一番正確ですが、計算作業と書き換えを毎日行うことはかなり面倒と思われます。三番目のものは看護職員が余分に配置してあれば、受け持ち患者数が実際より多く表示され、実態とのかい離が大きくなる可能性がありますし、病院側からすれば不利な数字を掲示していることとなりますので、好ましい表示ではないでしょう。
いわゆるDPC病院に関することの掲示ですが、きちんと掲示されている病院は多くありません。その理由ですが、厚生局が実施している適時調査などにおいて、今まではほとんどチェック対象にされてこなかったことが原因と思われますが、ルール上は必要ですからきちんと掲示しておきましょう。
保険医療機関が地方厚生(支)局長へ届け出たもの、具体的には各種施設基準及び入院時食事療養(Ⅰ)又は入院時生活療養(Ⅰ)の基準に適合するものとして届け出た内容についての掲示です。なお、入院時食事療養(Ⅰ)に関しては掲示として下記のように例示されています。
「入院時食事療養(Ⅰ)の届出を行っており、管理栄養士又は栄養士によって管理された食事を適時(夕食については午後6時以降)、適温で提供しています。」
「医療費の内容の分かる領収証及び個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書の交付について」の通知の別紙様式7などに掲示例が示されております。
明細書を発行している病院においては、平成28年3月に別紙様式7が改定され「また、公費負担医療の受給者で医療費の自己負担のない方についても、希望される方については、平成●年●月●日より、明細書を無料で発行することと致しました。発行を希望される方は、会計窓口にてその旨お申し付けください。」の文章が追加となっておりますので、漏れないように注意してください。
いわゆる保険外負担については、「療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて」(平成17年9月1日保医発第0901002号)に具体的な取扱いが示されており、法令の規定に基づかず、患者から費用の支払を受けている個々の「サービス」又は「物」について、その項目とそれに要する実費についての掲示が必要です。
具体的には下記のような掲示が必要です。
「当院では、以下の項目について、その使用量、利用回数に応じた実費の負担をお願いしています。
紙おむつ代 1枚につき 〇〇円
理髪代 1回につき〇〇〇〇円
――― ―――― ―――円
なお、衛生材料等の治療(看護)行為及びそれに密接に関連した「サービス」や「物」についての費用の徴収や、「施設管理費」等の曖昧な名目での費用の徴収は、一切認められていません。」
通知では上記のように例示されておりますが、末尾の「一切認められていません。」の部分は「一切しておりません。」の表現の方が相応しいでしょう。
この他にも、掲示が必要なものがありますので、次回にお話しさせていただきます。
竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。