COLUMN21|病院の給食について その2
平成29年11月30日
特別食加算と入院栄養食事指導料、外来栄養食事指導料について
特別食加算のことについては前回にお話しさせていただきましたが、これに密接に関係するものとして入院栄養食事指導料と外来栄養食事指導料(以下、双方合わせて「栄養食事指導料」とします。)があります。
これらの栄養食事指導料の要件としては、その保険医療機関の管理栄養士(非常勤でも可)が、医師の指示に基づき、初回にあっては概ね30分以上、2回目以降にあっては概ね20分以上、療養のため必要な栄養の指導を行った場合に、食事療養費とは別に病院においては初回は260点(2600円)、2回目以降は200点(2000円)算定できます。
対象の患者ですが、
- 別に厚生労働大臣が定める特別食を医師が必要と認めた者
- がん患者
- 摂食機能又は嚥下機能が低下した患者
- 低栄養状態にある患者
とされています。
なお、栄養食事指導料の特別食には心臓疾患及び妊娠高血圧症候群等の患者に対する減塩食、十二指腸潰瘍の患者に対する潰瘍食、侵襲の大きな消化管手術後の患者に対する潰瘍食、クローン病及び潰瘍性大腸炎等により腸管の機能が低下している患者に対する低残渣食、高度肥満症(肥満度が+40%以上又はBMIが30以上)の患者に対する治療食並びにてんかん食(難治性てんかん(外傷性のものを含む。)、グルコーストランスポーター1欠損症又はミトコンドリア脳筋症の患者に対する治療食であって、グルコースに代わりケトン体を熱量源として供給することを目的に炭水化物量の制限と脂質量の増加が厳格に行われたものに限る。)を含みます。
また、高血圧症の患者に対する減塩食(塩分の総量が6g未満のものに限る。)及び小児食物アレルギー患者(食物アレルギー検査の結果(他の保険医療機関から提供を受けた食物アレルギー検査の結果を含む。)、食物アレルギーを持つことが明らかな9歳未満の小児に限る。)に対する小児食物アレルギー食については、入院時食事療養(Ⅰ)又は入院時生活療養(Ⅰ)の特別食加算の場合と異なり、栄養食事指導料の特別食に含まれます。なお、妊娠高血圧症候群の患者に対する減塩食は、日本高血圧学会、日本妊娠高血圧学会等の基準に準じていることが必要になります。
上記③の「摂食機能又は嚥下機能が低下した患者」とは、医師が、硬さ、付着性、凝集性などに配慮した嚥下調整食(日本摂食嚥下リハビリテーション学会の分類に基づく。)に相当する食事を要すると判断した患者となります。
上記④の「低栄養状態にある患者」とは、血中アルブミンが3.0g/dL以下である患者又は、医師が栄養管理により低栄養状態の改善を要すると判断した患者となります。
- 入院時食事療養(Ⅰ)の特別食加算の対象患者と栄養食事指導料の対象患者の違いについて
- 栄養食事指導料にだけ該当するもの
- がん患者
- 摂食機能又は嚥下機能が低下した患者
- 低栄養状態にある患者
- 高血圧症の患者に対する減塩食(塩分の総量が6g未満のものに限る)
- 小児食物アレルギー食
- 患者の状態により差異のあるもの
- 高度肥満症の患者に対する治療食
小児食物アレルギー患者(食物アレルギー検査の結果(他の保険医療機関から提供を受けた食物アレルギー検査の結果を含む。)、食物アレルギーを持つことが明らかな9歳未満の小児に限 る。)
入院時食事療養(Ⅰ)の場合 肥満度が+70%以上又はBMIが35以上
栄養食事指導料の場合 肥満度が+40%以上又はBMIが30以上
入院時食事療養(Ⅰ)と栄養食事指導料のどちらにも「特別食」という言葉が出てくることから、対象患者が同一であるような錯覚をしそうですが、入院時食事療養(Ⅰ)では該当しない場合であっても、栄養食事指導料では該当する場合もあり対象患者の考え方に差異がありますので、注意してください。
- 算定のルール
- 月1回と週1回について
- カルテ記載について
- 管理栄養士が作成する栄養指導記録と食事計画案について
- 食堂加算について
外来栄養食事指導料は月1回(初回の月は2回)、入院栄養食事指導料は週1回とされていますが、週と月については「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)」と言われるものがあり、その中の「第2章 特掲診療料 通則の2」において、「算定回数が「週」単位又は「月」単位とされているものについては、特に定めのない限り、それぞれ日曜日から土曜日までの1週間又は月の初日から月の末日までの1か月を単位として算定する。」と明記されておりますことから、この取り扱いを適用することとなります。
間隔が30日間とか7日間開いていなければならないとの意味ではありません。極端な例ですが、外来栄養食事指導料は12月31日と1月1日に実施しても、月が替わっているので、どちらも月1回となり、入院栄養食事指導料は土曜日と日曜日に連続実施しても週が変わっているので、どちらも週1回となります。
どちらの栄養食事指導料を算定する場合でも、「管理栄養士への指示事項は、当該患者ごとに適切なものとし、熱量・熱量構成、蛋白質、脂質その他の栄養素の量、病態に応じた食事の形態等に係る情報のうち医師が必要と認めるものに関する具体的な指示を含まなければならない。」とされ、また「医師は、診療録に管理栄養士への指示事項を記載する。」ともされていることから、医師がカルテに管理栄養士に指示した内容や数値を具体的に期さなければなりません。
ただ単に「栄養食事指導を指示」程度しか記載されていないものが多く見受けられますが、必要なデータを管理栄養士への「指示箋」に記載しただけでは「カルテ」に記載したことにはなりませんので、このような書き方では要件を満たしません。個別指導でこの部分がチェックがされ指摘事項や返還とされるものが多いようですので、くれぐれも注意してください。
栄養指導記録には指導内容の要点の他に必ず指導時間(開始と終了時刻)を忘れずに記載してください。時間の記載漏れがありますと、算定要件である「概ね30分」とか「概ね20分」を満たしていることの証拠が無くなってしまいます。
食事計画案については「患者ごとにその生活条件、し好を勘案した」とされております。患者から普段の生活実態や好き嫌いなどのデータを事前に把握しておかないと、これらを勘案したものにはできません。
また、「食事計画案等を必要に応じて交付する」とされておりますが、「必要に応じて」の意味を誤解してしまい、「説明が難しいものではなかったので口頭説明だけで理解してもらえたので、食事計画案等は特に渡していません。」のように思われている管理栄養士を時々拝見いたしますが、平成24年4月20日付の「疑義解釈資料の送付について(その2)」の問31において「食事計画案等を必要に応じて交付すればよいこととされているが、計画等を全く交付せずに同指導料を算定することはできるのか。」の問いに対して、答えが「初回の食事指導や食事計画を変更する場合等においては、患者の食事指導に係る理解のために食事計画等を必ず交付する必要がある。」とされておりますので、初回の指導時には必ず作成して交付し、証拠として写しを保管するなどしておきましょう。
入院時食事療養(Ⅰ)の届出が受理されますと、特別食加算の他に1日当たり50円の食堂加算が算定できます。食堂加算を開始したり、取りやめしたりするときでも、それを原因とした届出は必要ありません。要件を満たせば、何時でも算定可能ですし、患者負担もありません。
食堂加算の要件は複雑ではなく、面積が1床当たり0.5㎡以上の食堂(談話室等との兼用や他の病棟との共用でも可)を用意していただくだけです。
食堂は病棟ごとに用意しても、病院全体や複数病棟で共用しても、合計の面積が1床当たり0.5㎡以上確保されていれば差し支えありません。また、病棟単位での算定が可能ですから、要件を満たしていない病棟がある場合には、それを除外して要件を満たす病棟だけでの算定が可能です。すべての病棟が加算対象の食堂を備えていないと算定できないと誤解している病院もあるようですので、注意してください。
病院側の対応として「食堂における食事が可能な患者については、食堂において食事を提供するように努めること。」とされておりますので、何らかの方法により食堂での食事を勧めていただければ、患者が食堂で喫食したかどうかは関係ありません。極端な例といたしましては、特定集中治療室管理料などを算定する治療室の患者であっても、要件を満たす食堂があって、食堂における食事が可能な患者については食堂における食事を勧めていれば、そこに入院している患者すべてに対して算定ができます。
なお、食堂は談話室等との兼用は認められていますが、それ以外の目的での使用は認められていませんので、談話室として利用している患者が居ないからと言ってリハビリテーションの治療訓練のために使用したり、ナースステーションが手狭だからと言って看護要員などが作業室代わりに使用したり致しますと、食堂の要件からは外れてしまいますので、食事時間以外であっても、必ず患者が使用する談話室としての環境は確保するように注意しましょう。
竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。