COLUMN25|平成30年度の適時調査
平成30年6月5日
適時調査
適時調査については過去のコラムでもいくつかお話ししておりますが、最近になって厚生労働省が適時調査に関する資料を公開したこともございますので、再度、ポイントや今後の方向性の予測などにつきましてお話いたします。
- 資料の公開
- 事前提出資料
厚生労働省のホームページに実施要領や調査票(チェックシート)が一部を除き、ほとんどの部分が公開されました。
ただし、1000ページを超える資料ですので、全部を印刷して内容を理解できるように読み込むのはかなりの知識と時間を必要とするのではないかと思われます。
また、資料に記載されている用語や言い回しに関しては、行政側の職員用に記されたものであることから、これらの書類に慣れていない方には理解しにくい部分もあると思います。
実際に読んだ方から質問を受けましたが、施設基準の告示と通知を100パーセント理解していないと、記載されてあることが何を意味するのか分からないこともあるようですので、資料を印刷して読む前に、施設基準のルールをよく理解しておくことも大切です。
以下の中から届出した施設基準により該当するものが対象となります。
1.基本診療料に係る書類
- 入院基本料等(共通)
- 様式9(「様式9」で届け出る特定入院料を含む。)
- 病棟(治療室含む。)の勤務実績表
- 勤務実績を確認する際に必要な次の書類
・勤務実績表に用いている記号等の内容及び申し送り時間が分かる一覧表
・勤務形態(日勤、準夜勤、深夜勤など)ごとの勤務時間が分かる書類
・会議、研修、他部署勤務の時間及び出席者が分かる一覧表 - 特定入院料を算定している治療室の日々の入院患者数等により看護職員の配置状況が分かる書類
- 病院報告(患者票)【直近1年分】の写し
- 急性期一般入院料1、7対1入院基本料(特定機能病院入院基本料及び障害者施設等入院基本料を除く)を届け出ている場合…(様式10 の2)
- 急性期一般入院料1、7対1入院基本料(一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料[一般病棟に限る。] 、専門病院入院基本料)を届け出ている場合…(様式10 の5)
- 障害者施設等入院基本料を届け出ている場合…(様式19)
- 総合入院体制加算1、2又は3を届け出ている場合…(様式13)
- 医師事務作業補助体制加算1又は2を届け出ている場合…(様式18 の2)
- 夜間看護加算(療養病棟入院基本料の注13)、看護職員夜間配置加算、看護職員夜間配置加算(地域包括ケア病棟入院料の注7、精神科救急入院料の注5、精神科救急・合併症入院料の注5)を届け出ている場合
日々の入院患者数等により看護職員の夜間の配置状況が分かる書類 - 重症者等療養環境特別加算を届け出ている場合…(様式23 の 2)
- 患者サポート体制充実加算を届け出ている場合…(様式36)
- 回復期リハビリテーション病棟入院料1又は2を届け出ている場合…(様式49)(様式49 の 2)(様式49 の 5)
- 回復期リハビリテーション病棟入院料3又は4を届け出ている場合…(様式49)(様式49 の 3)(様式49 の 5)
- 回復期リハビリテーション病棟入院料5又は6を届け出ている場合…(様式49)(様式49 の 5)
- 地域包括ケア病棟入院料1又は2を届け出ている場合…(様式50)(様式50 の 3)(様式10)
- 地域包括ケア入院医療管理料1又は2を届け出ている場合…(様式50 の 2)(様式50 の 3)(様式10)
- 地域包括ケア病棟入院料3又は4を届け出ている場合…(様式50)(様式50 の 3)(様式10)
- 地域包括ケア入院医療管理料3又は4を届け出ている場合…(様式50 の 2)(様式50 の 3)(様式10)
- 特定一般病棟入院料(地域包括ケア1又は2)を届け出ている場合…(様式50 の 2)(様式50 の 3)(様式10)
- 特定一般病棟入院料(地域包括ケア3又は4)を届け出ている場合…(様式50 の 3)(様式10)
2.特掲診療料に係る書類
- 心大血管疾患リハビリテーション料、脳血管疾患等リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料、呼吸器リハビリテーション料、障害児(者)リハビリテーション料、がん患者リハビリテーション料を届け出ている場合…
(様式44 の 2) - 精神科ショート・ケア、精神科デイ・ケア、精神科ナイト・ケア又は精神科デイ・ナイト・ケアを届け出ている場合…
(様式46)
3.保険医療機関等の現況
4.入院案内(入院のしおり)
5.組織図及び平面図
6.掲示物の写し(写真可)
「施設基準等」「入院時食事療養費」「保険外併用療養費」「保険外負担」の掲示
これらの書類については、調査日の10日前までに提出が求められますが、書類を作成して提出すれば済むものではありません。
厚生局は、これらの資料に記載された内容が施設基準等の要件を満たしているか事前に確認しておりますので、作成したものが要件を満たした内容になっているのか、満たしていない場合には計算誤りなどがないか、正しく計算されていたにも関わらず要件を満たしていなかった場合には何時からそのような状況になっていたのかなどを確認し、変更届の提出漏れになっている場合には、調査前に速やかに変更届を提出しておく必要があります。
- 当日準備する書類
- 調査書
平成30年3月以前については、調査日の前日に連絡がありましたが、4月以後は1か月前に送付される調査の実施通知に同封されるようになりました。
全部で98種の施設基準等について準備資料が決められています。
施設基準ごとにチェック用の調査書が用意されており、調査結果は4段階で評価され、調査書には下記のように記載されます。
上記の適否の記載は、施設基準の総合評価ではなく、調査項目(告示や通知に規定されている細かな要件)毎に記載が必要であるため、1カ所でも不適合とされ「否」に◯印が付されれば、他の部分は「適合している」とされても、その施設基準は不適合と判断され返還の指示がされる可能性があります。
特に、看護要員数、看護師割合、月平均夜勤時間数などについては、今までもそうでしたが要件を満たしていないことが数字により簡単に判断されてしまいます。当然ですが要件を満たしていないことが確認されれば、診療報酬の返還が指示されます。
また、数字の把握が正確に行われていなければ、要件を満たしていることを明確にすることができないため、これらの数字を明記する「様式9」の作成は100%完璧なものにしなければなりません。
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竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。