施設基準プロフェッショナルコラム

COLUMN26|施設基準の変更届について

平成30年7月31日

施設基準の変更届について

今年の診療報酬改定により施設基準の届出をした後の変更届については、別に規定されている場合を除き届出不要となりました。
まず、施設基準の通知の該当する箇所を確認していただきたいと思います。

  • 改定前の内容
    1. 基本診療料の施設基準の通知
    2. 「届出を受理した後において、届出の内容と異なった事情が生じた場合には、保険医療機関の開設者は遅滞なく変更の届出等を行うものであること。」

    1. 特掲診療料の施設基準の通知
    2. 「届出を受理した後において、届出の内容と異なった事情が生じた場合には、保険医療機関又は保険薬局の開設者は届出の内容と異なった事情が生じた日の属する月の翌月に変更の届出を行うものであること。」

    上記の中でアンダーライン部分を確認してください。ここでは「届出の内容と異なった事情が生じた場合には」とされているため、届出書に記載した従事者や施設、器具などに変更が生じた場合には、変更届を提出する必要があるとされておりました。

  • 改定後の内容
    1. 基本診療料の施設基準
    2. 「届出を受理した後において、届出の内容と異なった事情が生じ、当該施設基準を満たさなくなった場合又は当該施設基準の届出区分が変更となった場合には、保険医療機関の開設者は遅滞なく変更の届出等を行うものであること。」

    1. 特掲診療料の施設基準の通知
    2. 「届出を受理した後において、届出の内容と異なった事情が生じ、当該施設基準を満たさなくなった場合又は当該施設基準の届出区分が変更となった場合には、保険医療機関又は保険薬局の開設者は届出の内容と異なった事情が生じた日の属する月の翌月に変更の届出を行うものであること。」

    上記の中でアンダーライン部分を確認してください。ここでは「届出の内容と異なった事情が生じ、当該施設基準を満たさなくなった場合又は当該施設基準の届出区分が変更となった場合には」とされたことから、届出内容が維持されている場合には従事者、施設、器具などに変更があった場合でも変更届は必要ないこととなりました。

    改定前は疾患別リハビリテーションの施設基準の専従の常勤理学療法士などを配置替えすれば、その都度変更届を提出しなければならず、規模の大きい病院では「ほとんど毎月のように変更届を提出していました」のような話をよく耳にしたことがございましたが、改定後では「変更届を出さずに済むので楽になりました」のようなお話を聞くようになりました。

    しかし、入院時食事療養(Ⅰ)においては、このような変更が講じられていないため、上記のような取り扱いは該当いたしません。なぜなのかは甚だ疑問ではございますが、入院時食事療養の通知が別格であったことから、前回の改定のように該当箇所を手直しすることを忘れてしまったのではないかとの噂をお聞きしたことがございます。

  • 変更届が必要な場合
  • 特掲診療料の通知においては上記の他に下記のようなことが明記されております。

    「ただし、神経学的検査、精密触覚機能検査、画像診断管理加算1、2及び3、歯科画像診断管理加算1及び2、麻酔管理料(Ⅰ)、歯科矯正診断料並びに顎口腔機能診断料について届け出ている医師に変更があった場合にはその都度届出を行い、届出にあたり使用する機器を届け出ている施設基準については、当該機器に変更があった場合には、その都度届出を行うこと。また、CT撮影及びMRI撮影について届け出ている撮影に使用する機器に変更があった場合にはその都度届出を行うこと。」

    このため、ここに該当する施設基準に限りましては従事者や機器類に変更があった場合には従前通りに変更届を提出しなければなりません。

    なぜ、これらの施設基準についてだけ変更届が必要なのか疑問に感じられる方もおられると思いますので、少し説明させていただきます。
    これらの施設基準の中には点数を算定する場合において、点数の留意事項通知に下記のような規定があります。

  • 神経学的検査の算定要件
  • 「神経学的検査は、専ら神経系疾患(小児を対象とする場合も含む。)の診療を担当する医師(専ら神経系疾患の診療を担当した経験を 10 年以上有するものに限る。)として、地方厚生(支)局長に届け出ている医師が当該検査を行った上で、その結果を患者及びその家族等に説明した場合に限り算定する。」

  • 画像診断管理加算1の算定要件
  • 「画像診断管理加算1は、専ら画像診断を担当する医師(地方厚生(支)局長に届け出た、専ら画像診断を担当した経験を 10 年以上有するもの又は当該療養について、関係学会から示されている2年以上の所定の研修を修了し、その旨が登録されているものに限る。以下同じ。)が読影及び診断を行い、その結果を文書により当該専ら画像診断を担当する医師の属する保険医療機関において当該患者の診療を担当する医師に報告した場合に、月の最初の診断の日に算定する。」

  • 麻酔管理料(Ⅰ)の算定要件
  • 「麻酔管理料(Ⅰ)は厚生労働大臣が定める施設基準に適合している麻酔科を標榜する保険医療機関において、当該保険医療機関の常勤の麻酔科標榜医(地方厚生(支)局長に届け出ている医師に限る。以下この項において同じ。)が麻酔前後の診察を行い、かつ専ら当該保険医療機関の常勤の麻酔科標榜医が区分番号「L002」硬膜外麻酔、区分番号「L004」脊椎麻酔又は区分番号「L008」マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔を行った場合に算定する。」

    上記の中でアンダーライン部分を確認してください。ここに「地方厚生(支)局長に届け出ている(医師)」のように記載されておりますから、当該点数を算定するためには該当する医師について厚生局に届出をしなければなりません。この「届出」が施設基準の届出書を意味いたします。

    つまり、施設基準で届出した医師に変更があった場合には変更時点で変更届を提出いたしませんと厚生局に届出したことにはなりませんので、医師の変更後は当該点数が算定できなくなってしまいます。これらを回避するために特掲診療料の施設基準の通知においてわざわざ「変更届が必要」と明記してあることになります。厚生労働省としても算定不能となるようなことを防止するため親切に明記していただいたものと思われます。

  • 要件充足の管理
  • 変更届が不要となったからと言って施設基準の管理が楽になったわけではありません。

    通知の中では「当該施設基準を満たさなくなった場合又は当該施設基準の届出区分が変更となった場合」には変更届を提出する必要があると明記されている訳ですが、逆に言えば変更届が提出されていない期間においては「変更する要件に当てはまっていないこと」病院側が立証する責務が生じます。

    従事者が配置替えとなり変更が生じても施設基準で定める数や資格を充たしていれば問題になりませんが、配置換えされた時点における従事者が誰であって、どの様な資格を持っていたのかは記録しておき、いつでも提示できる管理体制を整えておかなければなりません。

    過去に変更となった従事者の履歴が残されていなければ、施設基準を維持していたことの説明ができませんので、適時調査や指導、監査の場において厚生局側より「証拠となるような資料がなければ従事者の配置がなかったと判断します」と言われる可能性が非常に高くなり、もしそのようなことになれば資料が存在しない期間の診療報酬の返還を求められることも十分にあり得るお話しです。変更届が不要となったことからそれに対する業務はなくなりましたが、証拠となる資料やデータの管理は従前よりも厳格にしておきませんと、思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性が高くなったものと考えます。

    これとは別に、入院基本料の「様式9」については、従事者の管理の有無とは関係なく毎月作成して保管しておかなければなりません。入院基本料を算定(請求)するためには、数値により必要な要件を満たすことを立証しなければならないものがいくつかあります。

    看護職員数、看護師割合、看護補助者数、月平均夜勤時間数、平均在院日数、看護必要度の割合、常勤医師数などがこれに該当いたしますが、この中で看護職員数、看護師割合、看護補助者数、月平均夜勤時間数の数値は様式9において算出することから、看護要員の勤務実績を細かく把握して、様式9を毎月正確に作成し保管しておく必要があります。

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竹田和行(株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役)

竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。