COLUMN29|2階建て、3階建ての施設基準 その1
平成31年1月31日
施設基準の要件として、別の施設基準が存在することにより届出に結びつくものがあります。
- 基本診療料の「加算」の施設基準
- 3階建て以上のもの
- 入院基本料や特定入院料の中だけでの2階建て
- 2階、3階部分の施設基準の名称
- 特掲診療料が1階部分になるもの
- 入院基本料が2階部分以上の位置付けになるもの
点数の請求区分ではA200番台に該当する施設基準がその形態にあります。
これらの施設基準は入院基本料(点数の請求区分ではA100番台)や特定入院料(点数の請求区分ではA300番台)の施設基準がベースとなり、その上に加算として届出するものですから入院基本料や特定入院料の施設基準がなければ届出をする意味がありません。1階部分となる入院基本料や特定入院料が存在して、その上にこれらの加算が存在するかたちになりますから、見た目では2階建てのような形態になる訳です。
上記にある「加算」の施設基準には、その施設基準の中でさらに加算が設定されているものがあります。例えば、急性期看護補助体制加算(A207-3)における「夜間◯◯対1急性期看護補助体制加算」は、急性期看護補助体制加算の上に存在する加算となりますから、この部分は3階建ての位置の該当することとなります。そして急性期看護補助体制加算における「夜間看護体制加算」の施設基準は、前述した夜間急性期看護補助体制加算の上に存在する加算となりますから、この部分はなんと4階部分の位置に該当することとなります。
同じように4階建てを構成する施設基準としては感染防止対策加算(A234-2)の「感染防止対策地域連携加算(3階部分に該当)」と「抗菌薬適正使用支援加算(4階部分に該当)」などがあり、3階建てを構成する施設基準としては医療安全対策加算(A234)の「医療安全対策地域連携加算」や、入退院支援加算(A246)の「地域連携診療計画加算、入院時支援加算」などがあります。
入院基本料の中だけで2階建ての加算を構成するものがあります。例えば、急性期一般入院基本料などの「ADL維持向上等体制加算」、療養病棟入院基本料の「在宅復帰機能強化加算、夜間看護加算」、精神病棟入院基本料の「重度認知症加算、精神保健福祉士配置加算」などが2階部分として存在します。
特定入院料では、特定集中治療室管理料の「小児加算、早期離床・リハビリテーション加算」、回復期リハビリテーション病棟入院料の「休日リハビリテーション提供体制加算、体制強化加算」、地域包括ケア病棟入院料の「看護職員配置加算、看護補助者配置加算、看護職員夜間配置加算(一般病棟入院基本料を対象として単独で設定されている「看護職員夜間配置加算」(A207-4)と混同しないように注意してください。)」などが2階部分として存在します。
入院基本料の中で2階部分として存在する加算や、基本診療料の施設基準における「加算」(A200番台)で3階部分以上に該当する加算は、単独の施設基準ではないため名称だけで告示や通知を探そうとすることは難しく、たまたま自分の病院で届出をしていたり、施設基準に相当詳しい方でなければすぐに見つけられないでしょう。
また、小児入院医療管理料には「注2に規定する加算」や「注4に規定する加算」などのように名称そのものが存在しない加算もありますので、会話の中で唐突に「注2に規定する加算」と言われても、すぐに何を指しているかを理解することは困難です。他の担当者と会話にしたり、厚生局に質問したりするときには「何の施設基準にある◯◯加算」のようにお話しいただけないと、聞いている方は別の施設基準と勘違いすることもありますから注意しましょう。
このようなケースは珍しいものになりますが、特掲診療料が1階部分になり特定入院料が2階部分の位置関係になっている形態としては次のようなものがあります。
回復期リハビリテーション病棟入院料の施設基準は、通知の通則において「心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ)、脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ)、(Ⅱ)若しくは(Ⅲ)、運動器リハビリテーション料(Ⅰ)若しくは(Ⅱ)、又は呼吸器リハビリテーション料(Ⅰ)の届出を行っていること。」とされております。同じようなものとして地域包括ケア病棟入院料の施設基準がありますが、この施設基準の通知には「心大血管疾患リハビリテーション料、脳血管疾患等リハビリテーション料、廃用症候群リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料、呼吸器リハビリテーション料又はがん患者リハビリテーション料の届出を行った保険医療機関であること。」とされております。
この2つの特定入院料は、該当するリハビリテーションの施設基準の届出が受理されていなければ届出はできないこととなりますので、理学療法士などの欠員が発生して、必要とされているリハビリテーションの施設基準の届出が不可になってしまった場合には、これらの特定入院料も共倒れで届出不可になってしまいます。
また、特掲診療料が1階部分で基本診療料が2階部分になっている形態としては、病棟薬剤業務実施加算の施設基準があります。この施設基準は特掲診療料の薬剤管理指導料の施設基準が届出されていることが要件とされており、施設基準の要件としては、薬剤管理指導料の施設基準に関わるものが多く含まれ、病棟薬剤業務実施加算の施設基準が後から出来たものですから、形としては先に出来ていた薬剤管理指導料の施設基準が1階部分の考え方になったと思われます。
急性期一般入院基本料の施設基準では、データ提出加算の施設基準の届出が必要とされております。また、データ提出加算の施設基準では、急性期一般入院基本料の届出をする場合においては診療録管理体制加算の施設基準の届出が必要とされます。この構図では1階部分が診療録管理体制加算、2階部分がデータ提出加算、3階部分が急性期一般入院基本料の関係になります。
2階部分以上に存在する施設基準は、それより下の部分にあたる施設基準が存在して有効となるため、もし、何らかの事情により下の部分に該当する施設基準が要件を満たさなくなった場合には、その上にある加算も自動的に要件を満たさないこととなってしまいますから、注意が必要です。
次回は、関連した施設基準が要件不足となったことにより、連鎖的に発生する返還金などについて説明します。
竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。