施設基準プロフェッショナルコラム

COLUMN35|2020年診療報酬改定の概要と注意点について

令和2年3月2日

2020年の診療報酬改定につきましては、2月7日中医協の答申がされました。
既にこれらの情報を基に改定内容を分析されているものと思われますが、現行の施設基準における主たる変更点と注意点について、この答申に示されているものを説明します。

  • 従事者の常勤配置用件の緩和
  • 医師等の医療従事者の常勤配置については、週3日以上かつ週24時間以上の勤務を行っている複数の非常勤者を組み合わせた常勤換算でも配置可能とされているものがありますが、週3日以上の要件は変わりませんが、勤務時間数が24時間から22時間に短縮されます。また、従前ではこのような取扱いがなかった施設基準においても、新たにルール化されているものもあります。(例…病棟薬剤業務実施加算の常勤薬剤師など)

    なお、施設基準によっては22時間ではなく24時間とされているものがあります。資料の誤植なのか、22時間とは区別され24時間をルールとしているかが不明確ですので、今後の情報に注意してください。

  • 夜間看護体制の見直し
  • 夜間看護体制加算、看護職員夜間配置加算において、3項目の実施が必要な必要要件の中に「夜勤後の暦日の休日の確保」、「柔軟な勤務体制の工夫」「ICT、AI、IOTなどの活用による看護要員の業務負担軽減」の3つの要件が追加され、院内保育所の考え方に一部変更が加えられています。

  • 特定集中治療室管理料
  • 週20時間以上配置が必要な専任常勤看護師について、2名の組み合わせで20時間の勤務時間を計上出来るようになります。ただし、同時に2名の勤務が発生する場合の勤務時間数は1名分しかカウントできません。

  • 麻酔管理料(Ⅱ)
  • 「麻酔中の患者の看護に係る適切な研修を修了した常勤看護師」を1名以上配置することにより、この看護師が麻酔担当医師と連携することにより、医師の行為を一部代行できるようになります。

  • 入院基本料の医療安全管理体制の基準
  • 安全管理責任者が「対面でなくてよい」と判断した場合には、ICTを活用するなどで、対面によらない方法でも会議が開催可能となります。なお、これと同様な取扱いが「院内感染防止対策の基準」、「医療安全対策加算」においても可能となります。

  • 抗菌薬適正使用支援加算
  • 抗菌薬の適正使用を目的とした院内研修が、感染防止対策加算に係る院内研修と併せて実施しても差し支えないことになります。

  • 急性期看護補助体制加算の研修
  • 研修内容に定められているア~カまでの研修のうち、アの「医療制度の概要及び病院の機能と組織の理解」については、内容に変更がなければ省略して差し支えないものとなります。なお、看護補助加算、療養病棟入院基本料の夜間看護加算、障害者施設等入院基本料の看護補助加算、地域包括ケア病棟入院料の看護補助者配置加算においても、同様な取扱いとなります。

  • データ提出加算の届出が必要な入院基本料等
  • 回復期リハビリテーション病棟入院料5と6、療養病棟入院基本料1と2においては、現行では200床以上がデータ提出加算の届出を必要とされておりますが、200床未満の場合においても届出が必要とされます。ただし、2年間は届出が猶予され、電子カルテシステムが導入されていないなどの場合には、その後も当分の間は届出が猶予される経過規定があります。

  • 緩和ケア病棟入院料1
  • 現行の基準の中の(13)アにある「直近1年間の当該病棟における入院日数の平均が30日未満であること」の要件がなくなります。

  • 認知症ケア加算
  • 現行の2の基準が改定後は3の基準となり、新たに2の基準が設定され、2種類の基準が3種類になります。
    1の基準において看護師の勤務時間が「週16時間」から「原則週16時間」に変更されます。「原則」とされることにより、16時間を満たさない週があっても差し支えないような考え方になると考えられます。

    新規の3(現行の2)の基準においては、各病棟に配置される適切な研修を受けた看護師が、2名配置から3名配置に変更されます。ただし、3人目の看護師については、所定の研修を受けた看護師からの院内研修で差し支えないとされます。

    新規の2の基準においては、医師か看護師(何れも1の基準と同じ資格を持つもの)を配置し、各病棟に3名の看護師(新規の2基準と同じ考え方)を配置することとなります。

  • 超急性期脳卒中加算
  • 薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師を常時配置する必要がなくなります。なお、一般血液検査、凝固学的検査、心電図検査が常時行える体制であることが追加されます。

  • 療養病棟入院基本料
  • 中心静脈注射用カテーテルに係る感染対策の指針を策定することと、中心静脈注射用カテーテルに係る感染症の発生状況を継続的に把握することが必要となります。また、中心静脈栄養の必要性の確認とその結果を診療録に記載することも必要となります。

  • 呼吸器リハビリテーション料、難病患者リハビリテーション料
  • 専従の従事者に言語聴覚士を含められるようになります。

  • 重症度、医療・看護必要度
  • 評価する看護師等に対する院内研修について、研修の実施者は外部の所定の研修を受講している必要が全くなくなります。

    該当患者割合の数値が別添1のとおり変更されます。なお、最低でも6カ月間の経過措置が設けられております。

    C項目で評価される日数が別添2のように変更されます。

    また、「別に定める検査…2日間」「別に定める手術…6日間」が新設(該当するものはレセプト電子処理システム用コードで規定される。)されます。
    B項目で評価されていた「「B14診療・療養上の指示が通じる」又は「B15危険行動」に該当する患者であって、A得点が1点以上かつB得点が3点以上の患者」の要件が廃止されます。

    また、400床以上の場合には全ての病院でⅡの計算方法によって行うこととなります。

  • 地域包括ケア病棟入院料
  • 400床以上の病院では、院内の一般病棟からの転棟した患者の割合が全体の6割以上になると入院料が9割に減算されます。
    入退院支援及び地域連携業務を担う部門の設置と、専従と専任の看護師、社会福祉士の配置が必要となりますが、これらの要件が「入退院支援加算」と類似していることから、同一の組織で対応可能となることが考えられます。

  • 回復期リハビリテーション病棟入院料
  • 1の基準の実績指数が40以上に、3の基準の実績指数が35以上に変更されます。
    1の基準において努力規定だった管理栄養士の配置が必須要件となり、2から6の基準においては管理栄養士の配置が努力規定とされます。

これらの取り扱いについては、今後において示される告示、通知などにより明確になりますので、それらをよく確認してください。

細かな取扱いについては事務連絡として「疑義解釈資料の送付について」(いわゆる「Q&A」と呼ばれているもので、最初のものは3月30日頃に発出されます)が発出されますので、そちらの確認も重要です。

なお、この事務連絡の確認は最新のものだけではなく、過去のものも確認しませんと理解不十分によるミスが発生する可能性があります。入院基本料の取り扱いが大きく変更となった2006年以後のものは見ておく必要がありますが、数として3000件を超える量がありそれを全部理解することは相当困難ですが、最近では、その内容をデータ化して検索できるような機能を装備したシステム(図1)も提供されています。

施設基準管理システム「iMedy」の詳細はこちら

なお、様式9の取り扱いについては、大きく変更されるような項目は見当たりませんでしたが、細かな変更により様式の印刷文字などが変更される可能性があります。様式9についても、計算や管理を簡素化するシステム(図2)が提供されていますので、今後の施設基準の管理の参考としてください。

様式9クラウドサービス「たすカルクス」の詳細はこちら
竹田和行(株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役)

竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。