施設基準プロフェッショナルコラム

COLUMN38|病院における消費税について

令和3年4月23日

保険診療の一部負担金につきましては消費税が非課税となっておりますが、保険外併用療養費の患者負担分や保険外負担につきましては課税対象となっております。2021年4月から消費税を含めた価格の表示方法を総額表示で行うことが義務付けとなりましたので、注意が必要です。

  • 消費税の課税対象となるものについて
  • 次のものが該当いたします。

  1. 保険外併用療養費の患者負担分
    例として、特別の療養環境の提供に係る病室(差額ベッド)、予約診療、大病院における初診(紹介状が無かった場合)、治験などの患者負担分
  2. 保険外負担
    例として、おむつ代、病衣貸与料、診断書発行料など
  3. 自費診療など
    例として、健康診断や人間ドック、ワクチン接種、保険ではない自費診療など
  • 価格の表示方法について
  • 国税庁のホームページでは、次に掲げるような表示が「総額表示」に該当するように例示されております。(例示の取引は標準税率10%が適用されるものとして記載しています。)。

    1. 11,000円
    2. 11,000円(税込)
    3. 11,000円(税抜価格10,000円)
    4. 11,000円(うち消費税額等1,000円)
    5. 11,000円(税抜価格10,000円、消費税額等1,000円)

    支払総額である「11,000円」が明瞭に表示されていれば、「消費税額等」や「税抜価格」が表示されていても差し支えないようです。 例えば、「10,000円(税込11,000円)」とされた表示も、消費税額を含んだ価格が明瞭に表示されていれば、「総額表示」に該当するようです。

    なお、総額表示に伴い税込価格の設定を行う場合において、1円未満の端数が生じるときには、その端数を四捨五入、切捨て又は切上げのいずれの方法により処理しても差し支えないそうです。
    3月まで認められていた「税抜き」の表示は認められなくなっておりますので、税抜き価格の表示が残っていた場合には直ぐに訂正が必要です。

  • 見落としがちな価格の掲示場所
  • 国税庁のホームページでは、次のように掲載されております。

    「総額表示の義務付けは、不特定かつ多数の者に対する値札や店内掲示、チラシあるいは商品カタログにおいて、「あらかじめ」価格を表示する場合を対象としていますから、見積書、契約書、請求書等については、総額表示義務の対象とはなりません。」

    このことから、院内掲示に留まらず、次のようなところに価格を表示しているものが総額表示に該当すると考えられますので、再度、漏れがないかどうか確認が必要です。

  1. ホームページに掲載した利用料などの金額表示
    病院のホームページの中にいろいろな料金が掲載されているものと思いますが、実際にご自分の病院のホームページを隅から隅まで見ておられる方は少ないと思われますので、ホームページに何が掲載されているか把握できていないことから、訂正漏れの場合が多いようです。
    病院によっては、古いままの掲示が今もそのまま残っていて、何を意味しているのか不明なものも時々拝見することもございますので、これを機会に、ホームページにおける掲示内容の点検をしておきましょう。
  2. 売店部門の料金掲示
    院内の売店が外注されているケースでは、受託している会社が対応していると思われますが、直営の売店では、担当部署において金額掲示を訂正する必要があります。
  3. 配布文書における各種料金掲示
    配布資料や、「病院便り」などの広報誌に料金が掲示されていることがありますが、これらについても上記のホームページ同様に見落とされるケースがあるようですので、すべての資料や広報物への掲載内容も確認しておくことが必要です。
  • 消費税が非課税になるもの
  • 国税庁のホームページには非課税の対象として次のような記載があります。

    「助産…医師、助産師などによる助産に関するサービスの提供等」

    なお、同様に公開されている「消費税法基本通達」には、次のようにも記載がされております。

    「6-8-3 助産に係る資産の譲渡等については、平成元年1月26日付大蔵省告示第7号「消費税法別表第一第6号に規定する財務大臣の定める資産の譲渡等及び金額を定める件」の規定により定められた金額を超える場合であっても非課税となるのであるから留意する。
    したがって、妊娠中の入院及び出産後の入院(6-8-2に掲げる入院に限るものとし、異常分娩に伴う入院を含む。)における差額ベッド料及び特別給食費並びに大学病院等の初診料についても全額が非課税となる。(平12官総8-3により改正)」

    正常分娩は保険診療ではなく自費診療に該当いたしますが、消費税は課税されません。また、保険診療になるような分娩(帝王切開での分娩など)において、特別の療養環境の提供に係る病室(差額ベッド)を使用した場合も非課税となりますので注意が必要です。

    最近までも、このような事例で誤って消費税を課税していたケースが報道されたこともありますので、再度、請求のシステムなどのチェックをお願いいたします。なお、病院として提供した保険外のサービスについての保険外負担についても、助産によるものでしたら同様に非課税になるようです。(どこまでが非課税になるかは、税務当局の判断になりますので、詳細は税務署や国税局にお尋ねください。)

    例として、インターネットにおいて公表されております東京都内の某大学病院の保険外等の料金徴収の規程には次のようになっておりました。

    1. 入院セット料(タオル・病衣) 1日当たり 550円(500円)
      消費税法で非課税とされる助産に係る資産の譲渡等に該当する場合については括弧内の料金とする。
    2. アメニティーセット料
      一般病棟用 1セット当たり 880円(800円)
      集中治療病棟用 1セット当たり 3,850円(3,500円)
      消費税法で非課税とされる助産に係る資産の譲渡等に該当する場合については括弧内の料金とする。
  • 厚生局への報告
  • 特別の療養環境の提供に係る病室(差額ベッド)などで、患者から支払いを求める料金に変更があった場合には、所定の書式により厚生局へ報告しなければなりません。報告した金額については厚生局のホームページで確認することができますので、報告内容を一度確認しておきましょう。また、報告金額と実際の料金額に相違がある場合には、すぐに正しい金額での報告をしましょう。

    厚生労働省の告示の「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」の第三の一の(3)には次のようにあります。

    「患者への情報提供に資するため、特別の料金等の内容を定め、又は変更しようとする場合は、地方厚生局長等に報告するものとする。この場合において、当該報告は、報告を行う保険医療機関の所在地を管轄する地方厚生局長等に対して行うものとする。ただし、当該所在地を管轄する地方厚生局又は地方厚生支局の分室がある場合には、当該分室を経由して行うものとする。」

    これは、厚生局へ報告していない料金は患者に請求できないことを意味します。

    そして、別の告示の「基本診療料の施設基準等」の第二の二には次のようにあります。(特掲診療料の施設基準等も同様)

    「地方厚生局長等に対して当該届出を行う前六月間において療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等(平成十八年厚生労働省告示第百七号)第三に規定する基準に違反したことがなく、かつ現に違反していないこと。」

    つまり、厚生局に特別の料金等の報告をしないと、この告示に違反することになりますから、施設基準の届出ができませんので、届出してある施設基準がすべて無効と判断される可能性もありますから、十分に注意が必要です。

竹田和行(株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役)

竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。