COLUMN43|再開された適時調査について
令和5年1月23日
施設基準の適時調査
新型コロナウイルス感染拡大の影響により2020年度と2021年度は実施されず、2021年度については実施状況報告書を提出することにより適時調査を実施したとみなす措置が 講じられました。
2022年度につきましては、別紙1(2022.1.25 4年度指導監査の実施)と、別紙2(2022.3.16適時調査通知)により適時調査が再開されております。
- 順番について
- 調査対象の施設基準について
- 実施方法について
- 病院の担当者の知識レベル
- 新形コロナ対策
- T厚生局の事例(厚生局名部分を除き原文のまま)
- K厚生局の事例(厚生局名部分を除き原文のまま)
- 調査延期のメリットとデメリット
- 返還金について
基本的な考え方としては、2021年度の「自己点検結果報告書」が提出されていない病院及び前回適時調査の実施年度が古い病院を優先して実施することとされておりますが、同一日内または同一行程内での組み合わせ(1日に2箇所実施のような場合によっては、これらの順番の優先順位が低いところが繰り上がって組み合わされる可能性もあります。
なお、情報提供(施設基準に関して不正なことを行なっているような内容のもの)があったような病院は最優先とされることは当然です。また、2021年度の「自己点検結果報告書」の内容が疑問視されるような場合も同様です。
個別指導に選定された場合には、原則的に適時調査も同時に実施することとされますので、この場合には優先順位が大幅に繰り上がることが発生いたします。
基本的には、適時調査実施要領に沿って行なわれますので「重点的に調査を行う施設基準」が対象とされますが、個別指導と同時に実施される場合には、個別指導で選定された患者の診療報酬の請求に関わる施設基準の確認も必要とされる事が多いことから「重点的に調査を行う施設基準以外の施設基準」であっても調査の対象とされる事があります。また、情報などにより選定された場合にはすべての施設基準が対象とされることもあります。
基本的には、2019年度までに実施されていた方法と変わりありません。施設基準の数にもよりますが、原則として保険指導看護師1名を含めた3人体制で3時間を標準として実施されます。1日に2箇所を実施する事もありますので、午前中は9時頃から、午後は13時30分頃からの開始が多いようです。
なお、施設基準の数が多かったりする場合には、調査担当者の人数が増えたり、時間が増えたり(場合によってはその両方とも。)することもあります。
適時調査が2年間ストップしたことにより、前回の調査からの間隔がかなり空いてしまった事は言うまでもありません。病院数が多い都道府県では調査の間隔が3年(4年未満)でまわっていたところもございますので、前回の調査から5年間以上も間隔が空いてしまっている病院も珍しくありません。このような病院においては、担当者が変わっていることも多く、施設基準のルールが熟知されていない方も多いように聞いております。
こうなってしまいますと、施設基準が正しく運用・管理できていていないリスクも増大し、知らないうちにルール違反状態に陥っている可能性も大きくなっています。このような状態の時に適時調査を受けますと、思ってもいなかったことから返還金の指導を受ける可能性も増加してしまいます。
厚生局により差違がありますが実施通知に次のような文章が付け加えられています。
「また、貴保険医療機関の関係職員が災害救助法(昭和22年法律第118号)の適用を受けた市町村において医療支援等に従事している場合又は新型コロナウイルス感染症の対応等のため、適時調査への対応が困難な場合については、厚生局宛てご相談ください。」
「なお、新型コロナウイルス感染症の患者の受入れ又は従事者の感染等により、調査への対応が困難な場合については、厚生局あて、ご相談ください。」
基本的には、新型コロナウイルス感染拡大により患者の受け入れが増えて対応できる人員に余裕がないような場合、病院職員が数多く新型コロナウイルスに感染したために対応できる人員に余裕がないような場合等においては、実施時期を延期してもらうことが可能です。突発的に院内クラスターが発生したような場合を除き、時期の延期を希望する場合には早めに管轄する厚生局に相談することが望ましいと考えます。
なお、適用される措置は一般的には実施時期の延期になりますので、延期すべき理由が消滅した場合には、調査が実施されることは言うまでもありません。
調査が延期されれば、病院側の体制に余裕があるときに対応することが可能となります。
しかしながら現在のところでは、新型コロナウイルス感染症に関して、施設基準の取り扱いに特例が講じられているものがありますので、この特例に該当している期間においては当該施設基準の要件が満たされなくても指摘や返還の指導を受ける事はありません。この期間に調査をしてもらった方が、特例がなくなった後に延期してもらうよりもリスクが低いことなども考えられますので、個人的には、可能であるなら調査を受けてしまうことをお奨めしております。
また、診療報酬改定直後においては、要件が変わった施設基準については、経過措置が設けられる事が多く、6ヶ月間や1年間はその要件を満たさなくても問題視されない期間がありますので、この期間内に適時調査が回ってきた場合には「ラッキー」と思っていただき、積極的に受けられることを推奨しております。
適時調査がいつ回ってくるのか予測はできませんが、実施通知が来たときには、ご自分の病院が新型コロナウイルス感染症でどのような影響が出ているのかを正確に分析していただき、特例がある期間内に受けてしまった方が有利になる事も鑑みて、受けてしまうのか、延期を相談するのか慎重にお考えください。安易に延期を希望して、後で実施された時期に特例や経過措置などが消滅してしまい、数々の指摘や返還金の指導を受けやすくなる可能性もあることを頭の隅に入れていただければと思います。
適時調査実施要領では、返還金は前回の適時調査時まで遡ることとされています。しかし、別紙2にあるように、2021年に自己点検結果表を正確に記載して提出した施設基準については、返還金は遡及しても2021年7月以後とされました。
これは「自己点検結果表を正確に記載した場合」に限られますので、自己点検時に確認をしていなかったり、いい加減な確認をして実際には施設基準の要件を満たしておらず、診療報酬の請求ができなかったような場合には、その時点まで遡って返還金の指導がされます。
更に、悪質なケースと確認された場合には、適時調査は中止となり個別指導や監査に移行する事もありますので、再度、自己点検が正確であったかどうか、第三者も参加させるなどして点検されることをお奨めいたします。もし、自己点検が不十分で施設基準の要件を満たしていないことが確認された場合には、速やかに厚生局に相談して、過請求となっている診療報酬の返還などについて、自発的に対応されることをお奨めいたします。
間違っても、隠蔽やねつ造などをいたしますと監査対象となり、結果によっては保険医療機関の指定の取消し処分を受けることもあり得ますので、そのような行為は絶対にしないようにしてください。
次回は、2022年度の個別指導についてお話しさせていただく予定です。
竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。