COLUMN50|入院基本料の7つの基準について
(その2)院内感染防止対策の基準
令和8年4月3日
1.院内感染防止対策

①院内感染防止対策
医療法施行規則第一条の十一第2項第一号には次のようなことが規定されています。
病院等の管理者は、院内感染対策のための体制の確保に係る措置として次に掲げるものを行わなければなりません。施設基準に定められたルール以前の問題として、ここに掲げられたことを実行することは、全ての病院で最低限必要なものとなっています。
- イ 院内感染対策のための指針の策定
- ロ 院内感染対策のための委員会の開催
- ハ 従業者に対する院内感染対策のための研修の実施
- ニ 当該病院等における感染症の発生状況の報告その他の院内感染対策の推進を目的とした改善のための方策の実施
②院内感染防止対策委員会の設置
名称は上記に限らず、病院で呼称する任意の名称で差し支えありません。開催頻度は「月1回程度、定期的に」とされておりますが、基本的には毎月実施する必要があります。なお、実質的に対面形式で実施可能なオンライン設備を用いることにより、必ずしも対面(集合しての会議)形式で実施しなくても差し支えありません。
また、下記のような疑義解釈も出ておりますことから、ここに示されるような方法でも差し支えありません。
・疑義解釈 2020年03月31日 医科 【横断的事項】
問175 安全管理の責任者等で構成される委員会、院内感染防止対策委員会及び医療安全対策加算に規定するカンファレンスについて、対面によらない方法でも開催可能とするとされたが、具体的にはどのような実施方法が可能か。
答え) 例えば、書面による会議や、予め議事事項を配布しメール等で採決をとる方法、電子掲示板を利用する方法が可能である。ただし、議事について、構成員が閲覧したことを確認でき、かつ、構成員の間で意見を共有できる方法であること。

③院内感染防止対策委員会の構成員
施設基準のルールでは、委員会の構成員は「病院長、看護部長、薬剤部門の責任者、検査部門の責任者、事務部門の責任者、感染症対策に関し相当の経験を有する医師等の職員」とされておりますので、ここに例示された役職者は必須で、これ以外に、病院の規模や別に届出している施設基準などにより、別の者を任意で追加することが必要と考えられます。なお、院長や看護部長が構成員から外れていたり、委員会に出席していない事例があり、適時調査で指摘されていることから、特に注意が必要です。
④感染情報レポート
院内の検査部において作成され、各病棟の微生物学的検査に係る状況等を記した「感染情報レポート」が週1回程度作成される必要があり、このレポートが院内感染防止対策委員会(以下、この項では「委員会」とします。)において十分に活用されていることが必要です。
また、このレポートは、「入院中の患者からの各種細菌の検出状況や薬剤感受性成績のパターン等が病院の疫学情報として把握、活用されることを目的として作成されるものであり、各病棟からの拭き取り等による各種細菌の検出状況を記すものではない。」ともされておりますので、検体の対象を適切なものに特定する必要があります。
レポートは週1回の作成で、これを月1回の委員会で活用しなければなりませんので毎月の委員会用にレポートの内容を取りまとめたものを別に用意する必要があります。
なお、小規模の病院で「検査部」が組織上において存在しない場合には、少なくても検査技師(不在の場合には医師)の元で、検体の検査結果が掌握されレポートが作成されるような管理体制にしておく必要がありますので、それらの経過が分かるようにしておく必要があります。
また、「レポートが委員会において十分に活用されている」ことを示すためにも、上記の説明に沿って作成された委員会用のレポート結果については、委員会の資料として配付されるだけではなく、委員会の場において、その内容の説明を受けたり審議をしたことについてを議事録に記載しておく必要があります。
⑤病棟における手指消毒
職員等に対し、流水による手洗いの励行を徹底させることが必要であり、各病室に水道による手洗い場所(洗面台等)又は速乾式手洗い液等の消毒液が設置されていなければなりません。ただし、精神病棟、小児病棟等においては、患者の特性から病室にこれらの消毒液を設置することが適切でないと判断される場合に限り、携帯用の速乾式消毒液等を用いても差し支えないものとされています。
洗面台等による水道水での手洗いでも、速乾式手洗い液等の消毒液でもどちらでも差し支えありませんが、水道水の場合には石けん液や濡れた手を拭けるような使い捨てのペーパータオル等の設置が必要と考えられます。
また、消毒液の場合には、その成分が手指消毒において有効なものである事や、使用期限など確認して、適切に管理する必要があります。
これまでの適時調査において、消毒液の開封(設置)日から推定される消費量と、実際の消毒液の減り方などがチェックされてしまい、「消毒液を使用していないのではないか」との疑いを持たれた事例や、適時調査での病棟の巡回時に、病室に出入りする職員や患者家族などが手洗いの実施や消毒液の使用をしていないことが現認されてしまい、同様な疑いを持たれた事例もありましたことから、普段の実行面での管理も重要なことと考えられます。
なお、精神病棟や小児病棟等において携帯用の速乾式消毒液等を用いる場合ですが、職員用の他に、患者家族の面会時などにおいて使用できるものを別に用意しておく必要があります。
2.感染対策向上加算の施設基準との整合性
入院基本料に示されている7基準の中の「院内感染防止対策の基準」は、全ての病院において該当するものですので、上記1で説明したことは必ず実行していただく必要がありますが、「感染対策向上加算」の施設基準の届出をした病院においては、上記に加え、感染対策向上加算の施設基準において定められたルールも実施していただく必要があります。
この施設基準では「感染防止対策部門の設置」、「感染制御チームの設置」、「感染防止対策の業務指針及び院内感染管理者又は感染制御チームの具体的な業務内容が整備」、「院内感染対策に関する年2回の職員研修の実施」などが求められております。
院内感染対策のための指針の策定にあたっては、上記1における内容に留まらず、この施設基準の内容に沿ったものにしておく必要もあります。
また、他の施設基準などにおいて、院内感染防止対策に関わることが別に求められるようなこともありますので、それらに該当する場合には、必要な事項も組み入れて指針を策定する必要があります。
竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。









