COLUMN49|入院基本料の7つの基準について
(その1)入院診療計画の基準
令和8年1月30日
1.入院基本料の7つの基準
入院基本料(特別入院基本料、月平均夜勤時間超過減算、夜勤時間特別入院基本料及び重症患者割合特別入院基本料(以下「特別入院基本料等」という。)及び特定入院基本料を含む。)及び特定入院料の施設基準を届出る場合には、下記に示す7つの基準を満たさなければなりません。
①入院診療計画、②院内感染防止対策、③医療安全管理体制、④褥瘡対策、⑤栄養管理体制、⑥意思決定支援、⑦身体的拘束最小化
2.入院診療計画書

入院の際に、医師、看護師、その他必要に応じ関係職種が共同して総合的な診療計画を策定し、患者に対し、別添6の別紙2又は別紙2の3を参考とした文書を作成し、病名、症状、治療計画、検査内容及び日程、手術内容及び日程、推定される入院期間等について、入院後7日以内に説明を行うことが必要です。(緊急入院で数時間後に死亡した場合や日帰り入院などの7日以内の入院であっても、入院診療計画の策定等が必要です。)ただし、高齢者医療確保法の規定による療養の給付を提供する場合の療養病棟における入院診療計画については、別添6の別紙2の2を参考にしたものとなります。「関係職種が共同して総合的な診療計画を策定する」とされているにも関わらず、管理栄養士や看護職員などと協議せず、医師が単独で当該計画書を完結してしまう事例があり、個別指導などでも指摘を受けることが多いので、注意が必要です。
なお、上記に示した当該様式にかかわらず、入院中から退院後の生活がイメージできるような内容であり、年月日、経過、達成目標、日ごとの治療、処置、検査、活動・安静度、リハビリ、食事、清潔、排泄、特別な栄養管理の必要性の有無、教育・指導(栄養・服薬)・説明、退院後の治療計画、退院後の療養上の留意点が電子カルテなどに組み込まれ、これらを活用し、患者に対し、文書により説明が行える場合には、各保険医療機関が使用している様式で差し支えないこととされています。
この様式ですが、施設基準の通知に例示されている別添6の別紙2、別紙2の2及び別紙2の3には、患者の生年月日と性別を記載する欄がありません。しかし、医療法第6条の4第1項第1号には「患者の氏名、生年月日及び性別」の記載が必要とされていますことから、任意の箇所に生年月日と性別が記載(参考資料※1参照)できるようにしておく必要があります。
3.記載上の注意点

一般的な事例として別紙2を例として、特に、勘違いなどが起こりやすい項目は以下のとおりです。
①主治医以外の担当者名
主治医とともに治療を担当する医師、病棟の看護師、管理栄養士(特別な栄養管理の必要性が有の場合など)、理学療法士等(当該計画書作成時において、リハビリテーションの実施を想定している場合など)、薬剤師(病棟薬剤業務実施加算を届出している場合や、褥瘡の診療計画に薬剤師が関わったような場合など。)、入退院支援を担当する看護師や社会福祉士などの氏名を記載する必要があります。
②治療計画
この欄に、単に「加療」とか、「精査」のように極めて曖昧に記載されている事例が見受けられます。入院は療養担当規則第20条七号の規定により「必要と認めた場合」に限られますので、保険医が入院を必要と認めた理由に沿った治療計画の記載は必要です。
③検査内容及び日程
この欄に「適宜」とか、「その都度」のように極めて曖昧に記載されている事例がかなり多く見受けられます。当該計画書作成時において、検査の実施がまったく分からないのであれば、このような記載でも差し支えありませんが、既に検査の指示を出していて未実施のものや、退院時までに医学的な観点から検査の実施が不可避であるようなものは、具体的に記載する必要があります。
特に、上記②の治療計画の欄において「検査目的」と記載しているにもかかわらず、「適宜」のような記載をしてしまいますと、何の検査をするために入院の指示を出したのかがまったく解らずに、相当にいい加減な記載と見られてしまいます。
④手術内容及び日程
この欄には、実施予定の手術名を正確に記載する必要があります。手術については「医科点数表第2章第10部手術の通則の5及び6に掲げる手術」の施設基準の点数を算定する場合には、「手術を受ける全ての患者に対して、当該手術の内容、合併症及び予後等を文書を用いて詳しく説明を行い、併せて、患者から要望のあった場合、その都度手術に関して十分な情報を提供すること。」とされており、この文書を「手術の同意書」で代用している病院がほとんどと思われます。手術名が、この文章と当該計画書で相違したりいたしますと、患者側からすると「?」のような疑問が出てくることは当然で、その結果が不信感の原因になりかねません。
⑤推定される入院期間
この欄に、単に「未定」と記載されている事例が見受けられますが、入院期間がハッキリと分からない場合であっても、医学的な常識から推定できる期間は記載する必要があります。患者側からしても、予測される入院期間によって、仕事の段取りを組んだり、場合によっては特別療養環境室への入院の希望の有無を左右する可能性もあります。
⑥特別な栄養管理の必要性
「栄養管理体制の基準」の規定により、「入院時に患者の栄養状態を医師、看護職員、管理栄養士が共同して確認し、特別な栄養管理の必要性の有無について入院診療計画書に記載していること」とされております。当然ですが、管理栄養士が不在であれば、この要件を満たすことが出来ません。夜間や休日により管理栄養士が不在の場合には、管理栄養士が勤務するまでの間は、この欄の「有無」の判断が出来ませんので、ここの記載は不可能となり、当然ですが当該計画書も完成できませんから、交付も患者側への説明も出来ません。当該計画書は入院時に直ぐ説明と交付しなければならないものではなく、「入院後7日以内に説明を行う」と規定されていますので、この間までは管理栄養士が出勤するまで待つ必要があります。
⑦その他 ・看護計画 ・リハビリテーション等の計画
この欄は、主として看護計画を記載していただく必要が多いところです。よく見られる不適切事例として「……お世話させていただきます。」とか「入院中、安楽に過ごせるように……」のような表現のものがあります。看護要員が入院患者の療養上の世話をすることや、入院期間中に安楽して過ごせるように努めることは当り前のことなので、このような社交辞令的で抽象的なものは「患者個々の応じたものになっていない」と見られます。
なお、最近では患者参加(参画)型の看護計画を導入している病院も増えております。この場合には、入院後直ぐに看護計画が記載された書面を患者に交付していることが多いようです。この書面を当該計画書と同時に交付して、この欄は「看護計画については別紙の通り」の表示に統一している病院もあります。
また、当該計画書作成時において、リハビリテーションの指示を出していたり、実施を想定している場合などには、「リハビリテーションの計画」についても記載する必要がありますが、既にリハビリテーション実施計画書が作成され、その説明も同時に行われるような場合には、上記の看護計画と同様に「リハビリテーションの計画については別紙の通り」の表示に統一している病院もあります。
⑧記載内容についての特例
がん患者への告知の件など、入院時に治療上の必要性から患者に対し、病名について情報提供し難い場合にあっては、可能な範囲において情報提供を行い、その旨を診療録に記載すれば差し支えありません。
⑨患者への説明
医師の病名等の説明に対して理解できないと認められる患者(例えば小児、意識障害患者)については、その家族等に対して行っても良いとされており、また、説明できる家族等もいない場合には、その旨カルテに記載し算定できるともされています。このような場合でも、患者の状態が改善し説明が行える状態になった場合又は家族等が現れた場合等には、速やかに説明を行い、その旨カルテに記載することが必要です。
⑩救急処置時の特例
救急患者として受け入れた患者が、処置室、手術室等において死亡した場合は、当該保険医療機関が救急医療を担う施設として確保することとされている専用病床に入院したものとみなされることとされ、病室に入院していなくても、死亡時に1日分の入院料等(特定入院料等も含む)を算定出来ますが、この場合にあっては、入院診療計画書等の交付は必要ないこととされています。
入院診療計画書は、患者に渡してしまった後は、患者がそれをどう使うかは患者の意思に委ねられます。自治体にある医療相談の窓口や厚生局などの行政機関に持ち込まれることもあれば、患者が自ら、その画像をインターネットに公表しているものも多数見られ、その中には記載内容に留まらず、病院名や作成・説明した医師名などが閲覧出来るものもあります。このようなリスクもありますので、当該計画書は丁寧に正確に記載する必要があります。
竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。









