COLUMN12|適時調査の当日準備資料 その1
平成29年2月10日
適時調査の標準的な実施方法について
適時調査の準備資料につきましてはNo.8でお話しさせていただきましたが、実際に「調査前日の午前中にメール又はFAXにてお知らせされる資料」につきまして、病院に共通して該当するものを一例ご紹介させていただきます。
コラムNo.8「平成28年度の適時調査」はこちら入院基本料につきましては下記のようなリストが送られてまいります。
- 入院基本料等(共通)
- 入院基本料等の施設基準に係る届出書添付書類(様式9)の平均入院患者数の算出の根拠となる書類(直近1年分)
- 入院基本料等の施設基準に係る届出書添付書類(様式9)の平均在院日数の算出の根拠となる書類
(別途、治療室、病棟単位で平均在院日数が規定されているものを含む)(直近3か月分) - 治療室を含む全ての病棟管理日誌及び外来管理日誌(直近1か月分)
- 入院診療計画書(作成例3例)
- 院内感染防止対策委員会の設置要綱
- 院内感染防止対策委員会の議事録(本年度分及び前年度分)
- 感染情報レポート(直近3か月分)
- 安全管理のための指針
- 医療安全管理委員会の設置要綱
- 医療安全管理委員会の議事録(本年度分及び前年度分)
- 医療安全に関する職員研修の計画及び実施状況が確認できる書類
(本年度分及び前年度分) - 褥瘡対策に係る専任の医師及び専任の看護職員の名簿及び褥瘡対策チームの設置がわかる書類(設置要綱等)
- 褥瘡対策に関する診療計画書(作成例3例)
- 栄養管理計画書(作成例3例)
- 栄養管理手順
それでは、(1)から順番に少し説明を加えさせていただきます。
(1)は、通常は「病院報告」になりますが、病棟や治療室ごとに入院患者数が求められる施設基準ある場合には、該当病棟や治療室の患者数の資料が必要となります。
例えば、一般病床が3病棟あって、2病棟は「一般病棟入院基本料」で、1病棟は「回復期リハビリテーション病棟入院料」などにしておりますと、入院患者数は一般病床全体の数ではなく、一般病棟入院基本料の2病棟分と回復期リハビリテーション病棟入院料の1病棟分が別々の計算になりますから、それぞれについての患者数がわかるような資料が別に必要となります。
(2)は、「平均在院日数」の要件がある入院基本料を届出してある場合に該当いたします。基本診療料の施設基準の通知「別紙4」にある、平均在院日数の計算に必要な数字がわかる資料が必要となります。
(3)は、看護部で管理している病棟日誌などで、病棟単位の他に、救命救急入院料などの施設基準では治療室単位のもの、また、外来などの部署のものに加え、看護部長が記載している看護管理日誌などもすべて用意しておく必要があります。
日誌類に必要に記録内容につきましては、基本診療料の施設基準の通知「別紙6」の2(1)に「看護業務の管理に関する記録」として、「患者の移動、特別な問題を持つ患者の状態及び特に行われた診療等に関する概要、看護要員の勤務状況並びに勤務交代に際して申し送る必要のある事項等を各勤務帯ごとに記録するもの。」とされておりますので、これらのものを最低限含む内容で、各病院の実態に応じたものが必要となります。
なお、特定集中治療室管理料や看護職員夜間配置加算など、その日の入院患者数に対して「常時○対1以上の看護師や看護職員の配置」が求められている施設基準では、ここに記載された患者数や看護職員の勤務者数が根拠とされる場合もあります。よって、記載漏れや誤りがありますと調査時において説明が困難となりますので、入念にチェックしておく必要があります。
(4)は、実際に作成された「入院診療計画書」の写しを3人分用意する必要があります。しかし、ただ単に用意すれば済むものではありませんので、基本診療料の施設基準の通知「別添2 第1、1」に「入院診療計画の基準」が明記されておりますので、必要な要件をよく確認しておき作成日、記載内容、患者のサインなどをチェックして、100パーセント問題のない事例を用意しておきましょう。
一般的には次のようなことに注意が必要です。
- 空欄
- 「患者の氏名、生年月日及び性別」の記載
- 患者への説明
- パス形式のものを使用する場合
- 「その他」欄の看護計画
- 電子カルテを使用している場合
- 管理栄養士が不在の日や時間帯
- 「検査内容及び日程」欄
空欄があったりいたしますと「記載漏れ」と疑われることもありますので、「なし」と記載するか斜線などで欄を抹消しておきましょう。
医療法施行規則第六条の四第一項一号には「患者の氏名、生年月日及び性別」の記載が必要とされておりますのが、見本様式「別紙2、2の2、2の3」には「生年月日と性別」の欄がないので、これらが漏れないように注意しましょう。印刷された用紙に該当欄がない場合には、上部にある患者氏名の付近に追記しておきましょう。
入院後7日以内となっておりますので、説明日が入院後7日以内であることを確認しておく必要があります。 なお、患者が医師の説明を理解できないような場合には、その家族に対して説明を行えば差し支えありません。また、家族もいない場合には、その旨をカルテに記載して説明できる状態になったり家族が現れた時に説明して、その旨をカルテに記載しておけば差し支えありません。
すべての患者の入院生活が用紙に印刷されたとおりになるわけではないでしょうから、必要な箇所を個別に追記または修正する必要があります。
病名は同じであっても患者の入院時の状態により、看護する実態は微妙に違うものでしょうから、それなりに工夫が必要です。なお、患者参加型を実践している場合には、患者に交付する看護計画書を入院診療計画書に添付して一体として交付することで、ここへの看護計画の記載を省略している病院も増えてきております。 「~~お世話されていただきます。」などの社交辞令的な表現はしないようにしましょう。
患者側がサインした用紙の画像をデータとして取り込みしていることがありますが、その場合には画面を見せるか、印刷したものを見せることでも差し支えありません。
「特別な栄養管理の必要性の有無」が確認できないため入院診療計画書の当該欄の記載はできませんので、入院診療計画書の作成が完了しないことから患者への説明も出来ません。なお、1週間を超えて管理栄養士が不在の場合は、それ以外の職員で共同して作成しても差し支えありません。
「未定」とか「適宜実施」とされているものが多いようですが、入院診療計画書作成時点で検査するかどうか決まっていないのであれば妥当な表現と思いますが、入院診療計画書の作成と並行して血液やX線などの検査指示を出している場合でしたら「血液検査及び腹部X線検査を本日実施、他は適宜実施します。」などのように記載しておくべきです。
スペースの関係もあり、(15)までのすべてを一度にご説明できませんので、今回の説明はここまでとさせていただき、(5)以後につきましては次回に説明をさせていただきます。
竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。