COLUMN14|適時調査の当日準備資料 その2
平成29年3月24日
適時調査の標準的な実施方法について
No.12におきまして、「調査前日の午前中にメール又はFAXにてお知らせされる資料」の「入院基本料等(共通)」項目につきまして(4)までお話しさせていただきましたが、今回は続きの(5)からをお話しさせていただきます。
コラムNo.12「適時調査の当日準備資料その1」はこちら- 入院基本料等(共通)
- 入院基本料等の施設基準に係る届出書添付書類(様式9)の平均入院患者数の算出の根拠となる書類(直近1年分)
- 入院基本料等の施設基準に係る届出書添付書類(様式9)の平均在院日数の算出の根拠となる書類
(別途、治療室、病棟単位で平均在院日数が規定されているものを含む)(直近3か月分) - 治療室を含む全ての病棟管理日誌及び外来管理日誌(直近1か月分)
- 入院診療計画書(作成例3例)
- 院内感染防止対策委員会の設置要綱
- 院内感染防止対策委員会の議事録(本年度分及び前年度分)
- 感染情報レポート(直近3か月分)
- 安全管理のための指針
- 医療安全管理委員会の設置要綱
- 医療安全管理委員会の議事録(本年度分及び前年度分)
- 医療安全に関する職員研修の計画及び実施状況が確認できる書類
(本年度分及び前年度分) - 褥瘡対策に係る専任の医師及び専任の看護職員の名簿及び褥瘡対策チームの設置がわかる書類(設置要綱等)
- 褥瘡対策に関する診療計画書(作成例3例)
- 栄養管理計画書(作成例3例)
- 栄養管理手順
(5)~(7)は、基本診療料の施設基準の通知「別添2 第1、2」に「院内感染防止対策の基準」が明記されておりますので、必要な要件をよく確認しておき、その内容を満たすものを用意しておきましょう。なお、他の施設基準(感染防止対策加算など)の届出がありますと、その施設基準で求められているものが上乗せになりますので、その場合には更に注意が必要です。
(5)は、院内感染防止対策委員会の設置要綱や設置規定(以下この部分で「設置要綱」といたします。)が必要となります。「院内感染防止対策の指針」の中に委員会のことが明示されていることから、小規模の病院においては設置要綱などを作成していないところもあるようですが、「指針」には細かなことまで明示していないことが多く、ルール上に求められている事項が欠落していることがありますので、設置要綱は別に作成したほうが望ましいと思われます。
設置要綱の記載項目ですが、「委員の構成(病院長をはじめとするルール上に必要な構成メンバーが明記されているか)」、「開催頻度(月1回の開催が明示されているか)」、「委員会の業務(感染情報レポートを活用することが委員会の業務に含まれているか)」などは必ず明記しておきましょう。
(6)は、院内感染防止対策委員会の議事録が必要となります。議事録の内容としては「出席者(病院長がほとんど出席していない事例が多いようですが、チェックされますので注意が必要です。)」、「開催日(毎月実施しているか)」、「議題(感染情報レポートを活用した記録)」などは必ず明記しておきましょう。
(7)の感染情報レポートですが、「作成者(病院においては検査部門で作成する必要がある)」、「作成日(毎週作成しているか)」などに注意が必要です。
(8)~(11)は、基本診療料の施設基準の通知「別添2 第1、3」に「医療安全管理体制の基準」が明記されておりますので、必要な要件をよく確認しておき、その内容を満たすものを用意しておきましょう。なお、他の施設基準(医療安全対策加算など)の届出がありますと、その施設基準で求められているものが上乗せになりますので、その場合には更に注意が必要です。
(8)の医療安全管理体制の指針ですが、「医療事故等の院内報告制度の内容(インシデント・アクシデントレポートの作成から処理までの過程や、医療事故の通報体制、事故内容のレベルなど)」、「職員研修の開催頻度」などが記載されている必要があります。
(9)は、医療安全管理委員会の設置要綱や設置規定(以下この部分で「設置要綱」といたします。)が必要となります。「医療安全管理体制の指針」に委員会のことが明示されていることから、小規模の病院においては設置要綱などを作成していないところもあるようですが、(5)で説明したように「指針」には細かなことまで明示していないことが多く、ルール上に求められている事項が欠落していることがありますので、設置要綱は別に作成したほうが望ましいと思われます。
設置要綱の記載項目ですが、「委員の構成(安全管理の責任者等が明記されているか)」「開催頻度(月1回の開催が明示されているか)」などか必要です。
(10)は、医療安全管理委員会の議事録となりますが、指針において医療事故等の院内報告の過程に「委員会での報告や審議など」が明示されている場合には、当然ですがそれらのことが議事になっていたことがわかるようにしておく必要があります。
(11)は、医療安全に関する職員研修の計画や実施記録となります。院内全体の職員研修の年間計画の中に、この研修を組み入れて行っている場合がありますが、「研修のテーマ」が医療安全に関係したものがどれであるのかを説明できないようなテーマばかりになっていることがあるようですので、研修計画において年2回分はハッキリと「医療安全」とわかるようなものをテーマとしておく必要があります。
また、各研修が1回しか実施されず出席状況が悪いような場合には、同じ研修を数回実施して、すべての職員(特に医師の出席が全くないような病院がありますが、当然ながらチェックされます。)が出席できる環境を作っておくことも必要ですので注意しましょう。
(12)~(13)は、基本診療料の施設基準の通知「別添2 第1、4」に「褥瘡対策の基準」が明記されておりますので、必要な要件をよく確認しておき、その内容を満たすものを用意しておきましょう。なお、他の施設基準(褥瘡ハイリスク患者ケア加算など)の届出がありますと、その施設基準で求められているものが上乗せになりますので、その場合には更に注意が必要です。
(12)の褥瘡対策チームの専任の医師及び専任の看護職員の名簿ですが、入院基本料の届出時に添付する様式5と様式7に、これらの職員の名前を記載する箇所がありますので、そこに記載した医師や看護職員と一致しているか確認しておきましょう。なお、様式5と様式7に記載した医師や看護職員が変更となっている場合には、変更届を求めている厚生局もありますので、変更届が必要かどうかの確認をしておきましょう。
また、褥瘡対策チームの設置要綱等ですが、「褥瘡対策チーム」は「褥瘡対策委員会」とは別の組織です。「褥瘡対策チームは、専任の医師と専任の看護職員の構成」で、「褥瘡対策委員会は、このチームメンバーに加え、薬剤師や管理栄養士などを加えた構成」のものが一般的で、活動内容も違いますので、混同しないようにしておきましょう。
(13)は、実際に作成された「褥瘡対策に関する診療計画書」の写しを3人分用意する必要があります。しかし、ただ単に用意すれば済むものではありませんので、基本診療料の施設基準の通知「別添2 第1、4」に「褥瘡対策の基準」が明記されておりますので、必要な要件をよく確認しておき作成者、記載内容などをチェックして、100パーセント問題のない事例を用意しておきましょう。 一般的には次のようなことに注意が必要です。
「記入医師名」「記入看護師名」ですが、一般的にはここに名前が記載された者が、この褥瘡対策に関する診療計画書を作成したと理解されます。ルール上は「褥瘡対策チームの専任の医師及び専任の看護職員」に限り、この診療計画書の作成ができることとされておりますので、記載者が専任職員と一致しているか確認しておく必要があります。
また、例示されている様式の「別紙3」は、過去に何度か変更されておりますので、現在使用しているものが最新のものになっていることも確認しておく必要があります。
(14)は、実際に作成された「栄養管理計画書」の写しを3人分用意する必要があります。しかし、ただ単に用意すれば済むものではありませんので、基本診療料の施設基準の通知「別添2 第1、5」に「栄養管理体制の基準」が明記されておりますので、必要な要件をよく確認しておき作成日、作成者、記載内容などをチェックして、100パーセント問題のない事例を用意しておきましょう。
一般的には次のようなことに注意が必要です。
入院から7日以内に作成することとされておりますので、作成日が入院後7日以内であることを確認しておく必要があります。
(15)の栄養管理手順ですが、ルールでは「管理栄養士をはじめとして、医師、看護師、その他医療従事者が共同して栄養管理を行う体制を整備する。」とされておりますので、これらの者が関わっていることを手順の中に明示しておくと、説明がしやすくなります。
ここに示された帳簿、様式、資料などは、入院基本料の施設基準の告示や通知に明記されているものや、告示や通知に記載されていることを実行するためには必ず必要となるものばかりですので、調査の通知が来てから、「ある」とか「ない」のようなことにならないように、普段から準備を万全にしておきましょう。
竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。