COLUMN31|1階部分同士の施設基準の関係
令和元年6月12日
特定入院料が要件不足になった場合
回復期リハビリテーション病棟入院料又は地域包括ケア病棟入院料の届出がされている場合において、専任医師や専従理学療法士などが配置できないなど、何らかの理由により当該特定入院料が要件不足となり、他の特定入院料に変更ができない場合には、当該特定入院料が届出されていた病床区分に別に届出されている入院基本料と包括して届出をし直さなければなりません。
- 回復期リハビリテーション病棟入院料又は地域包括ケア病棟入院料の届出が一般病床(一般病棟)で行われている場合
- 回復期リハビリテーション病棟入院料3から6の場合
- 回復期リハビリテーション病棟入院料1と2、又は地域包括ケア病棟入院料の場合
一般病棟入院基本料(特別入院基本料は除く)ですが、通常では夜勤帯に複数の看護職員が配置されている必要があります。
回復期リハビリテーション病棟入院料3から6においては、夜勤帯の看護要員の配置は看護職員1名と看護補助者1名で差し支えありません。もし、これらの回復期リハビリテーション病棟入院料の施設基準が維持できなくなり、他の特定入院料に変更できなければ、当該病棟以外の部分において届出がある一般病棟入院基本料と包括して施設基準の要件の適否が判断されますが、夜勤帯において看護職員1名と看護補助者1名の状態では急性期一般入院料と地域一般入院料の届出要件を満たさないことから、一般病棟全体において特別入院基本料に変更しなければならなくなります。
この場合ですが、特別入院基本料を算定することとなりますと、療養環境加算、医療安全対策加算、感染防止対策加算など基本診療料の施設基準の加算について数多くのものが算定出来なくなります。さらに、特定入院料においても特定集中治療室管理料など、告示の別表第十五に該当するものを除き届出が出来なくなります。特定入院料が届出できなくなりますと、上記と同様に当該特定入院料が届出されていた病床区分に別に届出されている入院基本料と包括して届出をし直さなければなりませんので、この部分についても特別入院基本料で算定することとなります。なお、特定集中治療室管理料などの特定入院料においては点数の算定方法が包括算定方式となっていますので、検査や投薬などの費用が入院料に包括されています。これを出来高算定方式に変更しますので、検査や投薬などの費用を別算定することとなります。
そして、一般病棟の入院基本料をDPCで算定していた場合にも、同様に検査や投薬などは包括算定方式になっていますが、出来高算定方式に変更(特別入院基本料ではDPCの取扱は不可)しなければなりません。
この二つの事例で共通することとして注意が必要なのが、包括算定方式で算定対象にならない検査や投薬が濃厚に行われたり、別算定できないためにカルテ記載がなくても誤請求になりにくいことから、医師がカルテに検査の必要性などを記載していないケースが多く見られます。特に、X線、CT、MRIなどの画像診断は、最近ではフィルムを使わないデジタル方式の病院も多いことから高額なコストがかからないため、退院前などに「念のため」として、出来高算定方式では算定できないような検査を必要以上に指示している医師が多いようです。このような状態のものを出来高での算定に変更した際に算定対象に含めてしまいますと、過請求として査定されたり、個別指導で返還の指導を受ける可能性が高くなります。もし、査定などを逃れるためにレセプト病名などを付けてしまいますと、不正請求の状態に近くなりますので、絶対に行ってはいけません。
入院料がこのような事例になることが将来に向かって発生する場合には、カルテ記載などはその時点でルールに沿って対応することも可能ですが、適時調査などにより過去に遡って指摘をされることとなりますと、過去のカルテの記載内容を書き直すことは不可能でしょうから、算定できない検査料などを考慮しますと経済的な損失は入院料の点数の差額に留まらず、これらのコストも上乗せして影響を受けることとなります。
上記①に該当しない場合でも、別の危険要素があります。急性期一般入院料と地域一般入院料(3を除く)ですが、夜勤帯に看護師1名を含む複数の看護職員が配置されている必要があります。
回復期リハビリテーション病棟入院料1と2、又は地域包括ケア病棟入院料においては、夜勤帯の配置は看護職員2名で差し支えありません。もし、これらの特定入院料の施設基準が維持できなくなり、他の特定入院料に変更できなれば、当該病棟以外の部分において別に届出がある一般病棟入院基本料と包括して要件の適否が判断されますが、夜勤帯において准看護師2名の状態があったりいたしますと急性期一般入院料と地域一般入院料(3を除く)の届出要件を満たさないことから、一般病棟全体において地域一般入院料3に変更しなければならなくなります。
- 回復期リハビリテーション病棟入院料と地域包括ケア病棟入院料の届出が療養病床(療養病棟)で行われている場合
療養病棟入院料1と療養病棟入院料2(注11と12を除く)は、入院患者20人に対して看護職員1人と、看護要員1人を配置する必要があります。仮に入院患者60人とした場合には、最低限の必要数としては看護職員9名と看護補助者9名の合計18名の配置が必要になります。しかし、地域包括ケア病棟入院料においては、入院患者13人に対して看護職員1人が配置されていれば最低限の基準を満たすこととなりますので、同様に入院患者60人とした場合には、看護職員14名の配置で済むことになります。このような条件の下で地域包括ケア病棟入院料の施設基準が維持できずに、他の特定入院料にも変更が出来なければ療養病床全体で包括して施設基準の要件の適否が判断されますので、60床の2病棟で入院患者120人では20対1の看護職員18名と看護補助者18名の合計36名以上の配置が必要となります。
しかし、前述のような状態ですと看護職員23名と看護補助者9名の合計32名の配置(1割以内の一時的な変動でも32.4人を下回ることは出来ません)しかありませんから、療養病棟入院料1と療養病棟入院料2(注11と12を除く)の届出は維持できませんので、療養病棟入院料2(注11)に変更しなければならなくなります。
看護職員や看護補助者の配置数に余裕があるときには、要件を割ってしまう可能性は低くなりますが、たまたま何らかの事情により配置数がギリギリであったようなときは要件不足に陥ってしまうことも十分に考えられます。
特定入院料が維持できなかった場合には、病院全体での入院基本料が基準を満たさなくなることもあり、施設基準の要件は複雑に絡み合っているため、施設基準の要件不足が普段のカルテ記載のことまで飛び火する可能性もあることを予備知識として覚えておいてください。また、ご自分の病院がこれらの条件に当てはまる可能性があるかどうか、特に届出対象の病床区分がどちらになっているのかを事前に確認しておき、施設基準の要件から外れることがないように、普段からの管理をしっかりとしておく必要が求められます。
竹田 和行(たけだ かずゆき)
1961年 東京都生まれ。
1993年 東京都福祉局社会保険指導部医療課において医療行政、特に看護、給食、寝具設備(当時のいわゆる3基準)とその他の施設基準についての指導を担当し、1999年に部署が変わるまでの間に指導、監査および調査のため数多くの病院の立ち入りに同行した。
その後、社会保険庁の出先機関において年金、健康保険の行政事務を担当し、2008年 関東信越厚生局医療課長補佐、2010年 関東信越厚生局群馬事務所審査課長を歴任し、2012年の退職までの4年間にも主として施設基準の指導を担当し、指導、監査および調査のため病院の立ち入りに同行した。施設基準を担当した10年間で約400か所の病院の立ち入りに同行した実績を持つ。
2012年 社会医療法人輝城会 医療・介護経営研究所 所長。
現在は 株式会社 施設基準総合研究所 代表取締役。
医療コンサルタントとして、施設基準のルールなどについて契約先の病院に助言などを行うほか、セミナーや講演会などで施設基準や個別指導などをテーマに解説を行っている。
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